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「なら良かった。で、今、蒼生のことも白石と話してたんだけど、聞いてなかったと思うから、要点だけ説明するね」 「あ、ごめんなさい。仕事の話かと思って……」  まさか、自分の話もしていたとは全く気づかなかったから、驚いた蒼生が謝れば、「仕事の話もしてたから、気にしなくていいよ」と答えた律が微笑みを向けてくる。 「蒼生はもう高校へは行かなくていい。学校側に話は通してあるから大丈夫。荷物は白石が取りに行ったし、卒業証書は送ってもらう。あと、蒼生のお父さんにも連絡をとって、ここで療養してることは了承済みだから、心配はいらない」 「あの……お父さんって……僕に父親はいないです」  律の話を懸命に理解しようとしたが、半分ほどしか分からなかった。高校に関しては、旭とのことを知っているから、蒼生のことを考えた上で交渉してくれたのかもしれない。けれど、律の話は唐突すぎて、蒼生は酷く混乱した。  それに、蒼生に父親は存在しない。  母親はいるけれど、高校に入学したあと出て行ったきりだった。 「やっぱり知らなかったか。じゃあ、その辺りから話さないと。白石、いい?」 「了解。蒼生君、今から説明するけど、聞いてる途中で分からないことがあったら言って」 「……はい」  蒼生がどうにか返事をすると、カップを置いた白石が話をはじめる。その内容は、蒼生にとって初めて耳にするものだった。  *** 「竹花君は、もう登校しないそうだ。先日、保護者の代理の方が来て、全ての荷物を引き取っていったらしい」 「保護者の代理は神城律……ですか?」 「そ、そ、それについては、生徒の個人情報だから、申し訳ないが、藤堂君にも言えない決まりなんだ。そもそも、対応したのは理事長だから、私も分からないんだよ」  雪で2日間休校になった次の朝、登校するとすぐに旭は校長室へと(おもむ)いた。  その名目(めいもく)は、蒼生と連絡が取れないことを心配して……だ。  そこで得られた返答に、内心苛々(いらいら)としながらも、表面的には平静を装い「分かりました。とにかく無事で良かったです」と、ホッとしたような演技をする。しかし、腹の底にはふつふつと怒りがわいていた。 「ありがとうございました」  一応礼を告げてから、校長室をあとにした旭は奥歯をキリリと噛みしめる。 (なんで、神城が保護者代理になってんだよ)  一人廊下を歩きながら、旭は思考を巡らせる。  誰が代理人なのかについては、すでに調べがついていた。今日は、答え合わせをしたかったのだが、校長の様子から見て神城で間違いないだろう。  当面の課題はどうやって蒼生を手元に連れ戻すか……だ。

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