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「今は雪が降ってるけど、晴れてたら富士山が見えるんだ」
まずは体を洗ってから、ジャグジーで少し温まって露天風呂へと移動した。外に出た瞬間は、寒さにカタカタと震えていた蒼生だが、今は隣で気持ちよさそうに温泉へと浸 かっている。
2人入ってもまだ余裕のある岩風呂を満たす温泉は、褐色 がかった淡い飴色 で、なめらかな泉質だから、肌が弱い蒼生が入っても問題は無いだろう。
「富士山……ですか」
雪の降る空を見上げたまま、答える蒼生の白い頬はうっすらと上気している。さきほどから、頑 なに律を見ようとしない理由は分かっているけれど――。
「蒼生、Look 」
ここは、あえてコマンドを使用することにした。肩を抱き寄せ耳元で低く囁くと、驚いたように身体が強ばり、それからゆっくり蒼生の顔がこちらへと向けられる。
「いい子」
揺れる視線が定まるのを待ってから、頭を撫でて褒めてやれば、黒曜石のような瞳に明らかな喜色が浮かんだ。
「顔が赤い。のぼせたかな?」
頬に手を添えて問いかけると、首を左右に振った蒼生は睫毛 を伏せ、「少し……恥ずかしいから」と、震える声で返事をする。
「もしかして、蒼生は一人で入りたかった?」
「違います。そうじゃなくて……あっ」
懸命に言葉を探す蒼生の体を抱き寄せて、「馴れて欲しいな」と告げてから、「蒼生、Kiss 」と命令をする。と、一瞬の逡巡のあと蒼生は律の肩に手を置き、膝立ちになって唇へと触れるだけのキスをした。
「んっ、んぅっ」
刹那、細い体を膝の上へと引き上げた律は、軽いキスを繰り返しながら、肌と肌とを密着させる。同時に背中を撫でさすると、体から徐々に力が抜け落ち、蒼生の口から心地良さそうな吐息が漏れた。
「セーフワード、覚えてるよな」
「は……はい」
キスを止め、顎を掴んでこちらを向かせれば、蕩 けたような虚ろな瞳には、隠しようもない艶が滲んでしまっている。
これまで何度もプレイをしたが、させたのはキスと自慰 までだ。体調面や精神的の負担などを考慮して、自慰を手伝うことはあったが奉仕をさせた事はない。
それても、蒼生の持つ隷属性 はこれまで会ったどのSubよりも強かった。
「蒼生、Stay 」
膝から蒼生を降ろした律は、湯船からいったん立ち上がり、風呂の縁 へと座り直す。すると、脚の間に蒼生が正座をしているような格好になった。
当然、動揺した蒼生は顔を背けようとするけれど、律が「Stop」と言えば素直に動きを止める。
「えらいな」
蒼生の唇を指でなぞり、優しげな笑みを浮かべた律は、「蒼生、Lick 」と命じながら、まだ萎えている自身の性器の指し示した。
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