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律は常に優しいけれど、プレイ中は殊更に甘く、蒼生のことを気遣ってくれる。ただ、それで律も満足なのかと考えれば、とても自信がもてなかった。
以前、2人で宿に泊まったあと、目覚めた蒼生に
「無理させてごめん。もう蒼生が怖がることはしない」
と、律は告げてきた。
その時は、意味も分からずに頷いたけれど、それ以降、律と一緒のベッドで眠ることは一度も無く、プレイ中も彼の性欲を満たす行為は一切しない。
それが何故かを問うような真似はできないけれど、きっと自分は律を失望させたのだろう。そう考えると、役に立たない自分のことが情けなくてたまらなかった。
(抑制剤を手に入れれば……律さんに迷惑かけずに済む。だけど……)
プレイで済むから必要ない……と、律が医師に伝えたため、通院しても手に入らない。
「話を変えようか。蒼生君は将来なにになりたいと思ってる?」
考えに深く耽っていると、龍真が声をかけてきたから、蒼生は慌てて思考を巡らせ口を開く。
「え? あ、特に……まだなにも。ただ、大学に行って、なにか資格をとって、自立したいと思ってます」
「資格を取るのはいいことだ。どんな資格が自分に合うのかいろいろ調べてみたらいい。律もだけど、俺も相談くらい乗れるから」
「ありがとうございます」
「あと、蒼生君はもっと自分に自信を持ったほうがいい」
「……がんばります」
いつかそんな日がくればいいと思った蒼生が答えた時、路地の向こうに人影が見えた。
「いた。蒼生おかえり」
「律さん」
それが誰かが分かった途端、小走りで駆け寄る蒼生を見ながら、「迎えにきたのか? ホント過保護だな」と苦笑しながら龍真は呟く。
「過保護でいいんだ。俺が保護者なんだから」
蒼生の頭を軽く撫で、微笑みながら答える律に「本当にそれだけか?」と聞いてみたくなるけれど、口を挟める立場に無いから、今のところは黙って見守ることにした。
***
「ああ、いいよ」
恐る恐る尋ねた結果、案外にあっさり許可が下りたので蒼生は一瞬固まった。
季節は夏。学生たちは夏休みへと入る頃で、暑い日が続いている。
蒼生はこれまで自宅で模試を受けていたが、場慣れするためにどこかの会場で受けてみたいと思っていた。2ヶ月前に頼んだ時には、「もう少し安定してからにしようか」と断られたから、今回も駄目で元々といった心持ちだった。
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