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第3話
プライベートも期待してます。と言われた千暁は悩んでいた。
つまりプライベートでもSMをしたいということなのか。
悩んでいても仕方がない。だから直接本人に聞いた。
「え、言った?俺、そんなこと。」
「言った」
「嘘。マジ?いや、SMはいいや。この前の撮影気持ちよかったけど辛かったのも確かだし……。マジでセーフワード言いそうになった瞬間何回もあった。」
「例えばいつ?」
「結腸こじ開けられた時と、潮吹き連発させられた時。」
「ああ、あれは辛いよね。」
「わかってて躊躇なくやるお前はすごいよ」
二人でぬくぬく湯船に浸かりながらそんな会話をする。
あの後暫くちんこが痛かったと浬さんに言われ、少し反省した。でも仕事なんだもの。仕方がない。
「じゃあ期待するって何に?」
「えー、そりゃあ、まあ、気持ちいいセックスに」
「……したいことあるとかじゃないんだ」
「あるっちゃあるよ。俺だって男だから、ネコだけど優位に立ちたいって思う時あるし。あ、でも最終的には翻弄されるのもいいなあ」
「……じゃあ、やって見る?」
「いいの!?」
「いいよ」
「よーし、代表に提案しよ!」
「またかよ!」
■
またまた通ってしまった企画。
どうやら俺達のビデオはいつも売上がいいらしく、浬さんはルンルンだ。
俺はと言うと、今回は一応サラリーマンの役らしい。
帰ってきたら彼氏である浬さんに癒しを求めて、浬さんは俺をとことん優しく包み込みお母さんみたいに甘えさせてくれるらしい。
は?なんだそれ。どんな神企画だ。
鼻息荒く現場入りした俺は、用意された安っぽいスーツに着替えて、椅子に座り撮影が始まるまでそこで待っていた。
「ダーリン」
「うおっ!」
そんな俺の膝に突然座ってきたのは浬さん。
フリフリのエプロンをつけている。
「何その格好。何でそんなにフリフリなの」
「可愛い?似合ってる?まあ、俺可愛いからなんでも似合うんだけどね」
「……似合ってる」
「何だその顔!」
自分で言うか、と思って苦い顔をすれば胸ぐらを掴まれて前後に揺らされた。
おかげで疲れたので、設定としては上手いこと役作りできた感がある。
「撮影始まるって!俺、めいいっぱい癒してあげるからさ、素直に感じてね、後輩くん。」
「……今のは彼氏くんって言うところでは?」
「どっちでもいい」
そう言って彼は行ってしまった。
俺はセットとして用意されている玄関に立ち、声が掛かってすぐ「ただいまぁ……」と覇気のない声を出した。
■
「おかえりなさい!今日もお仕事お疲れ様」
「ん、ありがとう」
「ご飯できてるよ。お風呂も湧いてるし、先にどっちにする?」
荷物を受け取りながらそう聞いてくる浬さんに手を伸ばす。
ギュッと抱きしめると「なーに?どうしたの」と聞かれて、それでも離さずにキスをした。
「ん……、もぅ、俺とえっちなことしたいの?」
「……うん」
「仕方ないなぁ。じゃあご飯もお風呂も後でね。こっちおいで、ベッド行こう?」
浬さんに手を引かれて寝室に移動する。
ベッドに座ると、何度も何度もキスをされ、舌を絡めて口内を蹂躙される。
浬さんはキスが上手い。本気で彼のキスに翻弄され、頭の中がフワフワしている間に、ベルトを外され、下履きの前を寛げられていた。
「お仕事頑張って偉いね。頑張ったご褒美だよ」
「ぁ、え……え……?」
ふにゃふにゃなペニスを取り出され、シコシコと手で扱かれた。そこに顔を寄せた彼はそれを舐めながら手を動かして、玉を頬張って飴玉みたいに舌で転がす。勃起して固くなったそれを咥え、喉奥までジュボジュボと扱かれて、「イきそうっ」と漏らすとスタッフから射精をしてもオーケーの丸サインが出る。
「ぅ、出る、イクッ」
「ん、出して」
浬さんの頭を抑えて、ビュクビュク射精する。
荒く息を吐いてベッドに倒れ込むと、追いかけてきた彼がネクタイを外してシャツのボタンを解いた。
「控えめ乳首」
「んッ、なにそれ」
「可愛いちっちゃい乳首だなあって。可愛いからいっぱい舐めちゃお」
「っあ!」
ぢゅ、と乳首に吸い付かれる。
普段は触られることも無いから感じるかと言われれば頷けないが、浬さんの舌技は凄い。
「っん、ぅ、浬……」
「可愛いねぇ。乳首ツンってなった。俺のおっぱいも吸う?」
そう言ってフリフリエプロンと服を脱いだ彼はピンク色の乳首を俺の前に見せて「どーぞ」と艶やかな笑顔で言う。
は?舐めるし。そう思ってむしゃぶりつくと、髪を撫でられ「いい子だね」と言われた。
台本には書いていたけれど、これは……実際にされるとハマりそうだ。
「あっ、ぁ、こーら、噛むのダメ、っん!」
怒られて噛むのをやめ、チロチロと舐めると髪をクシャクシャにされ「偉いね」と微笑まれる。
思わず彼にキスをするば、彼は笑ってそれに応えてくれた。
唇が離れる。
とっくに勃起したそこを浬さんの手が掴み、先端に後孔があてられる。
後孔は吸い付くようにクパクパしていて、俺だけじゃなく彼も期待しているようだ。
ゆっくりと熱い粘膜に覆われる。
いつも激しくしているからか、ゆっくりの動きが焦れったいのに気持ちいい。
「っは、はぁっ、ぁ、気持ちいい?俺の、中、良い?」
「うん、すごく気持ちいい」
「よかったぁ。動くね、千暁はお疲れだから、動かなくていいからね」
「ん……」
彼は俺の上で一生懸命腰を動かしている。
「あっ、あ、はぁ、きもち、千暁っ、千暁ぃ……」
「はぁ、はぁ……っ、ぁ、いい、浬、もっと締めて」
ペシっと軽くお尻を叩くとキュッと中が締まって、ペニスが刺激される。
──けれど。
浬は一生懸命頑張ってくれているのだけれど、正直物足りない。
動かなくていいといわれたけれど……
浬の腰を掴み、ビックリしている彼に構わず腰を突き上げた。
「っあ、あぁっ!」
「浬、浬……可愛い、もっと」
「んっあああっ!」
俺の腕を掴み、首を左右に振る彼だけれど、これは全て台本通り。
ガンガンに突いてやれば、浬は「イクイク」と言って射精する。
精液が俺の胸までを汚して、少し休んでから体を起こし、代わりに浬を寝かせた。
「あっ、ぁ、俺が……っ」
「交代」
「はっ、ぁ……」
「動くよ。ね、いいよね?」
返事も聞かずに律動して、浬さんを堪能する。
気持ちいい。もっといっぱい、彼を感じたい。
「あっ、ぁ、千暁ぃ、キスしたい、ちゅー、してぇ……」
「ん」
「んぁ、むっ、ふぅ……っん、ん、んぅっ!!」
前立腺と奥を交互に擦るように腰を動かす。
彼は顔を真っ赤に染めた。
「あっ、あぁぁっ!ゃ、はぁっ、ぁ、やぁ、俺、俺がしたい、のにぃっ!」
「イッていいよ、ここ好きじゃん。いっぱい出して」
「ひっ、ぃ、いく、イっちゃう──っあ、アッ!」
ピンと伸びた爪先。
続けて射精した浬さんは、脱力しているけれど、それでも俺を責めたいらしくて手を伸ばして乳首を抓ってくる。
「ぅ、あ……っ」
思わず背中を丸めて逃げようとした俺に、体を起こした彼が抱きついてきて、ピッタリと肌を密着させた。
「もっといっぱい、気持ちいいの、したいぃ……っ」
「……うん。しよう」
唇を重ねどちらとも無い唾液を飲み込んでゆっくりと動く。
パチュパチュと小さな音が鳴る。
そのうち浬さんは中で達して、ガクッと力が抜け倒れそうになったのを支えた。
俺が仰向けに寝転んで、その上に重なって、彼の腰を抑えながらゆっくり腰を動かす。
中を広げるように円を書いてから奥を突く。
そうしているうちにカメラから見えない場所でスタッフからローションで濡れた細めのバイブを渡された。
「浬、キスしよう」
「キスするぅ……」
唇を重ね、キスに夢中になっている彼。
俺のが入るそこにバイブの先端を宛てがうと、彼は目を見開く演技をする。
振り返ろうとして、それを片手で押さえ付けた。
「んむぅっ、あぁぁ!」
「んっ、や、べ……」
中はぎっしりと埋まっている。十分に解している上に細いバイブだから痛くはないだろうけど、多少苦しいのと振動にダラダラと精液を零している。
俺にも振動が伝わってきてイきそうになって、バイブをジュポジュポと暫く動かしてから、キュポっと勢いよく抜いた。
彼は背中をグッと反らして絶頂して、力が抜けたのか俺の上にまた倒れ込む。
「っ、っ……ぁ……?」
「浬?もう無理?」
「ぁ……むり、じゃない……」
「じゃあまた、奥まで入ってもいい?」
聞けば浬はギュッと拳を握って、涙目で俺を不安そうに見た。
「っ、優しく、して」
「もちろん」
起き上がり、浬を寝かせて足を大きく開かせたあと、お尻を高く上げさせる。
苦しいという彼に謝って、上からドチュッと奥まで一突きすると、簡単に結腸まで入った。
プシャッと噴いた潮が、浬の顔にかかっている。
「あぁぁっ!ぁ、深ぁっ!」
「っは、はぁ……このまま、いっぱい、させて」
「んっぁ、いっぱい、きて……っ!俺、たくさん、千暁のちんちん、ギュッてするぅ……っ」
浬さんは一生懸命にそう言って、俺はそれがなんだかすごく嬉しくて、演技だ、台本だとわかっているのに興奮して、カットがかかるまで彼を抱き続けた。
その頃には浬さんはフラフラで、話すことも億劫なのか頷いたり軽く手を挙げたりして返事をしていた。
付き合ってから愛が止まらなくてどうすればいいのかも分からず、俺はとにかく浬さんに謝ったけれど、浬さんは「これも、仕事……」と言って眠りに落ちた。
俺は「台本だったとしてもさすがにやりすぎ。加減を知りなさい」と代表に言われたし、スタッフにも「激しかったね」と若干引かれたけれど、浬さんは許してくれたので、このビデオも売れたらいいなぁと他人事のように思っていた。
■
「浬さん、あのビデオまた売れ行き好調だって」
「そうじゃなかったらキレてるよ」
「……すみません」
「俺が優位に立ちたいって言ったのにね。気がつけば結腸責めのセルフ顔射(潮吹き)だよ」
「セルフ顔射については申し訳ないけど、結腸責めは許可もらってるし……台本だし……」
「仮にあそこで拒否して演技は続けられた?」
「……すみません」
ムスッとしている彼に、許してくれたはずなのに!と思いながらも謝り続ける。
平日の昼間。浬さんに呼び出されてやってきたホテルで正座をしていた。
「まあ、もう過ぎたことだし、一度は許したんだし、もういいんだけどね。」
「……ありがとうございます」
「でも申し訳ないって気持ちがあるなら手伝って欲しいんだよ。」
「何を?」
首を傾げると、彼は俺にスマートフォンを投げて寄越す。
そこには後孔に手を突っ込まれて善がる男性が映っていた。
まさか、これを、俺にするつもり……!?
「今度、その突っ込んでる側の人と撮影することが決まったんだけど、念の為に準備したくて。」
「は!?」
驚いて目を見開く俺に彼はにっこり笑う。
「手伝ってくれるよね?」
ゴクリ、唾を飲んだ音がやけに大きく響いた。
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