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第5話

「ごめんね千暁君。今日の子初めての子で、凄く緊張しちゃってて……。」 「全然問題ないです。後の用事も無いし、落ち着くまで待ってますよ。……あ、それとも俺が行った方がいい?」 ある日の撮影現場にて。 相手役の新人さんが緊張して控え室から出てこれなくなったらしい。 よくある事だし、誰だって緊張はするし、全く怒ったりはしないが、スタッフさん達はオロオロしている。 「あー、そうだね。相手がどんな人か分からないから怖いとか、そういうのあるかもしれないし……。あ、いや、君だってことは知ってるんだけど!」 「俺がどういう人間か分からないから怖いのかもって言いたいんでしょ?……ちょっと行ってきます。」 控え室の方に足を向けると、近くにいるスタッフさん達は「困ったな」と溜息を吐いていた。 全員に少し離れていてもらって、部屋のドアをノックしようとすると、中から新人さんに向かって叱責するような声が聞こえてきた。 「いい加減にしろ」だとか「今更恥ずかしがるな」とか。 この業界に入ったならそうなのかもしれないけれど、俺は正直『いやいや』と思ってしまう。 ノックの寸前で止めていた手を動かし、返事を貰ってから中に入ると、新人さんが毛布にくるまって泣いていて、その前でマネージャーと思わしき男性が仁王立ちでそこに居た。 「すみません。俺が話させてもらっていいですか。あ、いや、文句とかじゃなく、普通に。俺のこと知ってもらった方が安心できるかなって思って。」 そう言うとマネージャーさんは俺に謝りながら部屋を出て行った。 ドアの前から人が居なくなってから新人さんに近づく。 「はじめまして。千暁って言います。今日の君の相手役なんだけど……」 「っ」 大きな目が涙を零しながら俺を見ている。 さながら兎だなと思いつつ、傍に腰かけて体のどこも触れること無く話を続ける。 「初めてって緊張するよね。大丈夫。マネージャーさんは怒ってたかもしれないけど、他の人は誰も怒ってないよ。時間のことは気にしなくていい。安心するまで俺と話しない?」 「……お、俺、男の人、初めて、で」 「そうなんだ。そりゃあ余計に怖いよね。」 「バイブとか、ディルドとかは経験あるん、ですけど、気持ちよくなるどころか、苦しいだけで……っ」 「あー、それは……」 ヒグヒグ泣いている新人さんと少しずつ距離を詰めていく。 「名前は……那月君だったっけ」 「っ、はい」 「那月君、ちょっとだけ触ってもいい?」 「えっ、あ、触るっ?」 「うん」 空いていた隙間をゼロにして、毛布を退かせ、着ていたバスローブごと小柄な彼を抱きしめる。 那月君の心臓が大きく音を立てていた。 「中は綺麗にできた?」 「し、しました……」 「偉いね。」 バスローブの下は何も身につけていないらしい。 そっと手を下ろしてふにゃふにゃのペニスに触れると、彼は大きく体をビクつかせたけれど、抱きしめたまま手を離さずにそこを扱く。 「っ、ぅ、ぁ……!」 「足閉じないで」 「ひぅぅ……」 「顔上げて。こっち見て」 怯えた様子で顔を上げた彼の唇を、自らのそれで塞ぐ。 固く閉ざしている唇を舐めると薄く開いて、そこに舌を入れて深く絡めた。 「あっ、ぁ……ん、ふぅっ」 「ん、上手」 手にあるペニスは段々と固くなり先走りで手が濡れる。そこから手を離し奥に進めて後孔に触ると、那月君の体に力が入る。 「大丈夫、キスしてよう」 「ぅ、ちあき、さん……っ」 「力抜いてみて。気持ちよくなれるよ」 そう言うと彼は俺とキスをしたまま、フッと力を抜いた。濡れた指で周りをクルクル撫でてからそっと指を一本だけ挿入すると、那月君はまた体を強ばらせた。 「深呼吸してみようか。ああ、そんな不安そうな顔しないで。」 「っく、苦しく、しないで」 「うん。約束する」 俺に凭れるように力を抜き深呼吸を繰り返す彼の頭を撫でながら、中が馴染むまで指は動かさず、どうでもいい話をして気を紛らわせる。 少し中が柔らかくなった頃、ゆっくりと円を書くようにして解していき、前立腺を見つけてやわやわと撫でた。 「っあ、あ!な、何っ!」 「前立腺ってわかる?ここ触られると気持ちよくなれるよ。誰も教えてくれなかった?」 「あっ、し、らないっ!誰も、っん、うぁ……っ!」 ちゅこちゅことそこを弄りつつ、指を出し入れしていき本数も増やす。 そうする事で中がフワフワになって、那月君も嬌声を漏らし、更には「気持ちいい」と声に出すようになった。 「指抜くね」 「っあ、ぅ……!」 指を抜くと名残惜しげに那月君が見つめてくる。 チュッとキスをしてやると顔を赤くして視線を逸らした。 「続きは本番で。もっとよくしてあげるよ」 「っ、本当?」 「うん。いっぱい気持ちよくなろうね」 那月君を抱き上げて、控え室を出る。 スタッフさん達は「待ってました!」と言わんばかりに颯爽と位置についた。 「辛い時は俺の腰を二回叩いて。後は感じてるだけでいいから」 「わ、わかりました」 「カメラは見ないでいいよ、俺の事見てて。」 今回は付き合って初めてのエッチというシチュエーション。 セックスの前と後のストーリーについては、別で撮るとして、今は彼の気持ちが萎えないようにベッドに寝かせお姫様の如く甘やかしてやらなければ。 「撮影始めまーす!」 「よろしくね」 「っ、はい」 そうして無事、撮影がスタートした。 ■ ベッドに押し倒し、何度もキスを繰り返す。 舌を絡め、ピチャピチャと鳴る水音の合間に那月君が甘えたような声を出す。 緊張して何も出来ないかもしれないと思っていたけれど、彼は俺の首に腕を回してより深くキスを求めてきた。 そんな彼の頬を撫でてやりながら、小ぶりな乳首に触れてクリクリと抓ってやると、小さく身体を震わせる。 「乳首、感じるの?気持ちいい?」 「っ、きも、ち……」 真っ赤な顔が可愛らしい。 目元は潤んでいて、軽くキスをした後体をずらし、乳首をチロっと舐めた。 「っあ!」 驚いて逃げようとした彼をやんわり押さえ付け、そのまま少し赤くなるくらいまでいじめてやる。 肩に手が置かれ、グイッと押されるけれど柔い力は何の障害にもならない。 唇を離し、閉じられた足を開けるとそこにはしっかりと主張したペニスがあった。 恥ずかしそうに手を口元に持っていく彼を横目に、また体をずらして顔を寄せ、わざとらしく舌を出してそれを舐める。 「あぁっ!ァ、舐め、っ!?あっ、やだ、そんな、そんなとこ……っ」 「んー?美味しいよ」 舌で舐めていただけのそれを咥えて、ジュポジュポと下品な音が鳴るようにフェラしてやる。 「あっ、ぁ、だめ、いく、イクイク──ッ!」 カメラが那月君に寄って、感じ切った顔を撮っている。 ビュクっと口の中に精液が出され、細かく痙攣している彼のそれをヂュっと吸って口を離すと、今度はこちらにカメラが。 ゴクリと飲み込んで口を開け、舌なめずりをした。 上手い具合に力の抜けている体。 うつ伏せに転がし、彼の尻臀を左右に分けるとそこをカメラが映す。 淵をクルクル撫でて、指を入れると撮影前に少し解した甲斐あって難無く飲み込んでいった。 「んっ、ぅ、うぅ……っ!」 「すごい、ちゃんと入るんだ……」 台本に書いてあったセリフも喋って、ちゅこちゅこ弄る。 さっき前立腺の場所を教えたからか、はたまた無意識にか、腰を揺らしそこに当たるように誘導する那月君が可愛い。 「あぁっ!」 「ん、ここ?ここが気持ちいいの?」 「あっ、ぁ、気持ちぃ……!もっとぉ……!」 焦らすのも可哀想なので前立腺を触ってやって、そうするとペニスから先走りがボタポタと溢れ出す。 「あーあ、すごいよ。いっぱい濡れてる」 「ひぁ、っあ、あーッ!きもち、気持ちいぃっ!」 さっきまでとはまるで別人だ。 十分に解れたそこから指をぬいて、また体を仰向けにさせた。 「挿れてもいい?」 「っ!」 「だめ?」 「……っ、い、いれて」 振り絞ったような小さな声だった。 けれどしっかりと声は拾えていたようでカットはかからないし、何の指示も出ない。 足をガバッと開かせ、勃起したペニスをそこに宛てがうと、那月君はアウアウと言葉になっていない声を漏らす。 「挿れるよ」 「っ!」 グッと腰を動かす。 ゆっくりと開いたそこがどんどん飲み込んでいく。 自分でペニスを扱く那月君は、バイブやディルドを使ったことがあると言っていただけあって、上手く力を抜けていた。さっきはやっぱり緊張しすぎていたんだな。 「んっ、先っちょ、入ったよ」 「ぁ、あ……す、ごい……」 「苦しくない?」 「だ、いじょう、ぶ……」 「よかった……。もうちょっと入るね」 「うん……っあ、あっ、あっ!」 ゆっくりと奥まで挿入して、そこで止まる。 那月君は必死で呼吸をしていて、慌てて唇を重ね、息を吸うのを制御した。ここで過呼吸を起こされると撮影が止まってしまう。 「んっ、ちゅ、むぅっ!」 「はぁ……気持ちいいね」 「ぉ、あ……気持ち、いい……っ!ここまで、きてるぅ……!」 そう言ってお腹を撫でる彼。 台本に無かった言葉だ。本気で感じているみたい。 中が少しキツかったのからフワッとしだして、馴染んだのがわかるとゆっくり律動を開始する。 ひっきりなしに聞こえだした喘ぎ声。 きっとこの子はもう大丈夫だろうなと思い、自分も楽しむことにした。 「は、はっ、はぁ……っ」 「あっ、あぁっ、あーッ!そこ、そこ、もっとぉ……!前立腺、もっとして、あっ、おしり、いっぱい、グチュグチュってしてぇ……っ」 那月君の自身のペニスを扱いていた手は、俺の背中に回っていて、足は腰に絡められる。 少し動きにくいけれど、そんな様子は見せずにお望み通り動いてやった。 「ひっ!ぁ、いく、ぇ、あ、おかしい、なんか、くる、やぁっ、や……っ、ぁ、とまって、やだぁっ、ぁ、い、く……いく、イク──ッッ!」 「っ!」 那月君の背中が大きく仰け反る。 腰を押さえ付けて、射精感を堪え彼を見ると、中で達したのか触ってもいないのに射精していた。 白目を向いている彼がカメラに収められる。 「っは」 「っお、あっ、あ、いやぁっ、いま、いった、今イったから、待ってぇ……っ!」 カンペで動くように指示が出て、那月君には悪いけれど休ませることなく律動を再開した。 そのまま、射精しそうになって合図を送れば、オーケーサインが出て、ずるっと後孔からペニスを抜き、那月君の顔にぶっ掛けた。 「っあ、ぉ、ぉ……っ」 「ん、舐めて」 濡れたペニスを那月君の口に擦り付けると、チロチロと舌で舐めてくれる。 少しして体を離せば代わりにカメラがうっとりした表情の彼を撮り、続いてるポッカリと空いた後孔と離れてぐちゃぐちゃになった全身を撮して、撮影が終わった。 ■ カットがかかると、スタッフさんがバスタオルと水を持ってきてくれる。 那月君は動けないようで、まだ絶頂の余韻に浸っていた。 汚れた体を拭いてやり、そっと支えながら水を飲ませる。 「那月君、那月くーん。大丈夫?」 「ぁ……ち、千暁、さん……」 「うん。お疲れ様。すごくよかったよ」 「ぅ……」 スタッフさん達も次々に那月君に「よかった!」と声を掛けていて、彼は恥ずかしそうにしていたけれど「ありがとうございます」と返事をしていた。 それぞれシャワーを浴びて俺は一足先に「お疲れ様です」といい現場を出る。 するとすぐそこに何故か浬さんが立っていて「え、何で!?」と大きな声が出た。 「新人の相手、お疲れ様」 「あ、はい。ありがとうございます。浬さんもお疲れ様です。今日撮影でしたよね?」 「うん。朝にね。それが終わって帰ろうとしたら代表から電話が来てね、千暁の現場で新人が使い物にならないかもしれないからって、もしかしたら出てもらうかもって急遽呼ばれたんだけど……人たらしがなんとかしたらしい。」 「人たらしって……言い方ぁ。え、じゃあずっと居たの?」 「お前が新人を宥めに控え室に入ったところから見てましたが」 ムスッとした表情の彼が、背中を見せてズンズン歩いていく。 慌てて追いかけて隣に立つと、「むかつく!」と言われて目を丸くした。 「ムカつくって何が?」 「お前が!」 「えぇ……?」 「人たらしの性格、直した方がいいよ。あの新人がお前を見る目、恋をしたそれだったよ!」 「撮影的にはありがたかったけど?」 「プライベート的には恋人はお怒りだよ」 「……嫉妬してるんだあ」 「しちゃ悪い!?」 俺を見て怒った彼を引き寄せ、抱きしめてキスをする。 暴れる浬さんの背中をトントンと撫でて唇を離し、耳元に顔を近づけた。 「でもプライベートでこういうことするのは浬さんだけだよ。」 「っ!」 「それじゃダメ?」 体を離し、彼を見ると顔を赤くして、それを見られないようにと手で隠した。 「こ、今回だけだから!」 「うん」 「今日はうちに泊まって、プライベートで恋人にしかしない優しいエッチして!」 「はーい」 浬さんの腰を抱いて道を歩く。 彼の体温はいつもより少し高かった。

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