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第7話
あの後、スタッフさんと話し込んでいた俺は、支度を終えて帰ろうとする浬さんを引き止められずに、嫌な空気のまま別れてしまった。
代表からも「何かあったの?」と連絡が来たけれど、うまく説明出来ずにいる。
だってあれは仕事だ。慣れていない人をフォローするのは当たり前で、だから浬さんに謝るつもりは毛頭ない。
「浬さん。いい加減にして貰えますか」
「はいはい」
「……そうやって不貞腐れて気分悪いです。俺は仕事をしただけ。この業界で働いてるならわかるだろ。」
「わかったから、あっち行って。」
約二週間経って、事務所でたまたま出会した彼は相変わらず素っ気ない。
腹が立って文句を言うけど、彼は気にする素振りはない。
「……代表、この後浬さんって何か入ってたりしますか。」
「いや?今日は特に何も。」
「ありがとうございます。浬さん連れて行くんで、用があれば俺に連絡ください」
「はぁっ!?俺行かないし!家帰るし!」
ジタジタ暴れる浬さんを持ち前の筋力で抑え込み代表が呼んでくれたタクシーにぶち込む。
タクシーに乗った瞬間から抵抗をやめた彼は、大人しくホテルに連行された。
「話し合いしましょう」
「……」
「まず、嫉妬したんだろうなと言うのは分かります。千暁の彼氏なのにって言ってましたから。でもね、俺は仕事をしていただけであって、それ以上でも以下でもないんですよ。」
「知ってる。だから腹が立ってるの」
ベッドに座った浬さんは、俺をじっと見てから短く舌を打つ。
「お前がそうやって平然としてるのが腹立つ。仕事なのはわかってるよ。俺だって同じ、仕事をしてたんだから。でもさ、撮影が終わったあとは別に、俺を優先してくれてもいいだろ。他のスタッフだっていっぱいいたじゃん。千暁だけがいたわけじゃない。」
段々と顔を下げて俯きがちになる浬さん。
「顔見て」と言えば、嫌々顔を上げて話を続ける。
「見せつけたっていいじゃん。あの子、千暁のこと好きそうなんだもん。取られないように牽制しちゃダメ?甘えちゃダメなの?」
「……あんた本当、頭悪いよな。」
「はあ?もう無理、別れる。」
「は?別れるわけないだろ馬鹿。」
立ち上がった浬さんを押し倒す。怒って眉間に皺を寄せる彼にキスをして暴れようとする体を抱きしめて抑えた。
「あのね、何で俺が那月君に取られる前提なの?俺、浬さんが好きだって言っただろ。浬さんに何回好きって伝えた?今まで、出会ってから、ずっと。……ようやく手に入った人を手放すわけ無いよ。」
「そんなの、わかんないよ。」
「じゃあ今わかって。俺は浬さんのだし、浬さんは俺の。」
大人しくなった浬さんを解放して、目をじっと見れば唇を尖らせたまま頷いた。
「わかった」
「うん。」
「……大人気ないことばかりしてごめんね」
「それは、まあ……うん。許してあげる」
「……怒ってた?」
「うん。めちゃくちゃ腹立ってた」
「……フェラするから許して」
「フェラもいいけど、エッチさせて。」
「大歓迎」
浬さんの服を脱がせて、下着姿にさせ、首筋に唇を落として鎖骨まで、跡が残らないように軽く吸い付いて、チロっと舐める。
乳首を撫でて、キュッと摘むと浬さんの声が小さく聞こえた。
「千暁はさ、モテるんだからさ」
「ええ?」
「知らないの?お前、人気だよ。 」
「そうなんだ?浬さんは?俺の事どう思ってんの?」
「お人好しで人たぶらかしの迷惑極まりない彼氏」
「……なんか、複雑」
「甘やかすのは俺にだけでいいよ」
浬さんの手が頬を撫でる。彼の腰に手を添えた。
「四つ這いなって」
「……顔見てしたいのにぃ?」
「舐めたいんだけど、ダメ?」
「は?ダメなわけないし」
浬さんはサッとうつ伏せになったあと、腰を上げて自分から後孔を見せてくる。
尻にキスをして、それから後孔を舌でチロっと舐めた。
「っあ……気持ちぃ……」
「ん、ちゅ……」
尖らせた舌を後孔に挿れて、中に唾液を注ぐ。
腰を揺らしだした浬さんにクスッと笑みが零れてしまう。
「ぉ、あ、やば、中、すご……ッ!」
「もっと開いて」
「ん……っ!」
尻を左右に開く浬さんはひどくエッチだ。
顔を離し、指を挿入する。突然で驚いたのか、彼は「お゛ぉっ」と汚い声を出す。
前立腺をゴリゴリ虐めると、逃げるように腰を動かした彼。
「い、く、イクイクっ!ぁ、そんな、したら……っぐ、ぅっ、ぁ、や、出る……ッッ!」
射精した浬さんを休ませることなく、奥を突いてやれば喉をキューッと鳴らして爪先を丸める。
「ぁ、だめぇっ、いってる、イッてるから……っ!」
「あと一回イけたら止めたげる」
「うぅぅっ!」
正直仲直りするまでの間、ずっと胸がムカムカしていたのでこれくらいは許されるだろう。
「っあ、あーっ!ぁ、でる、潮出る、やば……っ、ひ、いっ、ああぁっ……!!」
「指だけでこんなんなっちゃって、最後までもちそう?」
潮まで吹いてしまったので、仕方なく手を止めてやる。
荒い呼吸を繰り返す彼にこちらを向くように言い体勢を正す。
「フェラして」
「ぁ、ぉ……ん……」
膝立ちになった浬さんが俺のペニスに躊躇なくしゃぶりついて、ジュルジュル音を立てながら扱く。
グッと喉を突くと、チラッと俺を見た彼が喉を開けて奥まで飲み込んでいく。
「っぐ、ぅ……ふ、ぅぅ……っ」
「浬さんって本当にフェラ上手だよね。すごく気持ちいい」
「ぉ、ぐぅ……っ」
「喉の搾り取る動きが最高。動いていい?」
浬さんがコクコク頷く。
そっと後頭部に手を置いてゆっくり律動すると、目を閉じて俺の手首を掴んで耐えている。
引き抜いて呼吸をさせたあと、もう一度挿れて、今度は少し激しく。
そして奥で止まればキュッキュッと締められて、太腿を三回叩かれ手を離す。
「っが、ごほっ、っは、はぁっ、はぁ……っ」
「浬さん、先走りでドロドロ」
「んぅ、っ、きもち、いい」
うっとりと蕩けた表情を見せる浬さんをコロンと寝転がして足を開かせる。
「足抱えられる?」
「ん」
濡れたそれを後孔に宛がう。
「挿れるよ」
「うん……っあ!」
くぽっと簡単に先端が入る。
浬さんが一瞬ぐっと固まって、勢いよく射精する。驚いて彼を見ると、同じように彼も目を見開いて「う、あ、ぇ……?」と声を出す。
「まだ先端だけですが……もうイッたの?」
「っ!」
恥ずかしいのか真っ赤な顔を腕で隠した彼が可愛すぎる。
背中を屈めて顔を寄せ、腕を退けてからキスをする。眉間に皺がぐぐっとよっていたけれど、キスは嬉しいのか必死で応えてくれた。
「大丈夫そう?奥まで挿れるよ?」
「……ん」
浬さんの顔を見ながらゆっくりと奥まで挿入する。
快感が思っていたより大きいのか、苦しそうに唇を噛んでいたけれど「やめて」とは言われなかった。
「ぅ、ぁ、あ……ち、あき、千暁……っ」
「うん、ちょっと、待つよ」
「はぁ……っ、ぁ、千暁とするの、久々、だから、気持ちよすぎて、怖いかも……」
「っ、よかったじゃん、気持ちよくて」
「えぇ……?でも、苦しいよ」
「お仕置きで痛いことされるより、ずっと良いでしょ」
「それはそう」
目が合ってくすくす笑うと、彼はギュッと目を閉じる。
「わ、らったら、中、響くっ!」
「あ、ごめん」
「んー……!動いて……っ」
コツコツ奥を突く。
気持ちよさそうに目を閉じながら感じている彼は、そのうち腰を浮かせて首を左右に振り始める。
「っぁ、あぁっ!ぁ、いく、イクイクっ!」
「ん、!」
ビュクっと何度目かの射精をした浬さんは、脱力して荒い呼吸を繰り返している。
その体を抱きしめてキスをした後、結腸まで犯すために奥の壁に先端をグリグリと擦り付けた。
「ひっ!ぃ、む、むり、奥は、今日は無理っ!」
「ぐーって力んで」
「いっ、ぃ、や、ぁ!あっ、あーっ!」
「うん、上手。ふわふわしてる、ほら、もう入るよ」
「ぁ、あっ、あ、あー……ッ」
ぐぽっと先端が結腸に嵌った。
キツい締めつけに耐えることなく、そこで射精する。
「ぉ、あ、あぁ……っあつ、あつい、いって、ぁ……いってる、ずっと……っ」
「っはぁ、はぁ……っすご、浬さん、気持ちいい……」
「あ!ぁ……ぉ、い、いって、ぅ……」
ガクガクと震える浬さんから、突如ガクンと力が抜けた。
顔を覗きこめば白目を向いて失神している。
「……何寝てんの」
勝手に落ちられても困る。
構わず律動して中を刺激すると、一瞬飛んでいた意識が戻ってきて、浬さんにしては珍しく泣きながら「無理」と伝えてきた。
「あーっ、ぁ、おく、もうやめて、だめ、あっ、あ、こわい、気持ちよすぎて……っぁ、ぐっ、うぅぅ……っ!」
「頑張って、あとちょっとだけ」
「ひっ、ぃ、うぅ……」
少し激しく動くと、また強い力で締付けられる。
声を漏らさないよう奥歯を噛んで射精すれば、浬さんも同じタイミングで絶頂したらしい。潮を吹いて痙攣していた。
ペニスを抜いてドロドロになったそれを彼の口元に持っていく。
「ん、ちゅ……ふ……」
「頑張ったね」
「ぉ……ん、もぉ、終わり……?」
「うん。ありがとう」
綺麗になったそれを口元から離す。
軽くタオルで彼の体を拭いてから二人でシャワーを浴びて、ソファーに座りようやく一息ついた。
「まだお腹の中違和感ある……。あんな激しくしなくてもいいじゃん。そんなに怒ってたの?」
「いや、興奮しただけ」
「俺の体もたないよ……。」
「……ごめんなさい」
浬さんに怒られてトホホ……と反省していると、頭を撫でられた。
どうやら許してくれるらしい。
「浬さん」
「なーに?」
「好きですよ」
「……んふ、わかってる。俺も好きだよ」
そっと唇に浬さんのそれが重ねられた。
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