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第9話
ニヨニヨ笑う浬さんに、冷や汗をかきまくっている俺。そして目の前は仁王立ちの社長。
「──で、二人はどういうつもりなのかな?」
代表の耳に噂(事実)が入ったらしい。
浬さんは俺の腕に自分の腕を絡めて、体を擦り寄せてくる。
シンプルにやめてほしい。今はそういうの、多分火に油を注ぐ行為だと思うので。
「すみません。流れでそういう話をしてしまいました。」
「……ん?」
「軽率でした。流石に売れっ子の浬さんと下っ端の俺が付き合ってるなんて、DVD買ってくれてる人からすると嫌ですよね。売上落ちちゃうかな……」
「……もう。社長が変な言い方するから千暁が勘違いしてるじゃないですかぁ。」
ブーブーと唇を尖らせてた彼にギョッとした。
勘違い、とは。
「ああ、別に怒ってないよ。というか二人が付き合ってるのは知ってたし。」
「へ?」
「ずっと千暁のこと応援してたんだよォ。だってずっと浬に片思いしてただろ。それがいつの間にか千暁と那月君との撮影で浬が物凄い嫉妬したの見て爆笑しちゃった。」
浬さんと同じくニヨニヨ笑う代表。
怒ってたんじゃなかったのかと安心して浬さんにもたれかかった。
「で、前の撮影でスタッフに優しいビデオ撮りたいって言ったんだって?」
「あ、言いました。この前はSMだったので、次は甘やかしたいなと。」
「よろしい。台本とか無く本当にただの二人の恋人セックスを撮ろうか」
俺と浬さんは目を見合わせて大きく頷いた。
■
いい匂いがする。
目を開けて、ぼんやりキッチンの方を見ると浬さんが立っていた。
料理を作っているらしく、何かを着る音が聞こえた。
ググッと伸びをして体を起こし、ベッドを降りて洗面所へ行き、顔を洗い歯を磨く。
そろそろキッチンに入って、手を洗う彼に後ろから抱きついた。
驚いて小さく跳ねた彼に「おはよ」と言うと水を止めて振り返ってくれる。
「おはよぉ。よく眠れた?」
「ン」
「ん、ちゅ……朝ご飯作ったんだけど、食べる?」
「んー……」
浬さんの服の中に手を入れて腰を撫でる。
くすくす笑う彼は「寝惚けてる?」と言いながら俺の手を止めることなく、彼の乳首に触れると「ぁっ」と小さく声を漏らした。
「千暁、ちょっと……」
「服、捲って」
「え……えぇ、ここでするの?」
「うん」
「待って、ぁ……」
服を捲り、裾を浬さんに咥えさせる。
背中を屈め乳首に唇を寄せて、ヂゥッと吸うと僅かに腰を震わせた。
「んっ、ぅ、っ!」
「手貸して」
浬さんの手を取って自分の股間に導く。
服の上からそこを撫でる彼は、段々と興奮してきたのか乳首をぷっくりと腫らして、股間もテントを張り出した。
「千暁、服、脱ぎたい……」
「ん」
一度手を止めて浬さんの服を脱がせる。
彼の口に指を突っ込んで舐めさせて、唾液で濡れたそれで後孔を撫でた。
「っ、あ、ぁ……!」
「ん、もう充分柔らかいね」
チュプチュプなんども指を抽挿して、勢いよく引き抜くと甘く達したのか、膝から崩れそうになった彼を支える。
「っは、はぁ……」
「後ろ向いて、ちゃんとここに掴まってて」
キッチンの台に掴んでおくように伝え、取り出したペニスを後孔に宛てがう。
期待でヒクヒク動くそこにゆっくり挿入して、浬さんのお腹に手を回し強く抱きついた。
「あ、ぁ……深、んっ、ぁ、あぁ……!」
「ここまで来てるね」
「っ!ァ、おなか、押しちゃダメ……っ」
「可愛い」
ちゅ、ちゅっと浬さんの肩や項にキスをして、仲が馴染んだ頃律動を始める。
甘い声が心地いい。奥の壁を撫でるように動くとそれだけで達した彼が首を左右に振る。
「っぁ、だめ、そこ、入らないで……っ」
「ん、何で、気持ちいいよ」
「良すぎて、ぁ、あっ、あぁ……っ!」
「でももうふわふわになってる。ほら、ここに来てって言ってるよ」
「うぅぅっ!」
まだダメだと言う彼に無理はさせちゃダメだよなと、浅い所を責める。
前立腺を引っ掻いてやればガクッと腕から力が抜けてキッチン台にもたれかかってしまう。
「ベッドに移動するね」
「んぁ、一回ぬいて……」
「んーん、このまま運ぶ」
「ぁ、えっ、ぁ、──お゛……っ」
入ったまま、浬さんの両足を腕に引っ掛けて抱き上げる。背面駅弁の体位は不安定だから怖いようで、慌てて俺の首に腕を掛けた彼が可愛い。
ベッドに降ろしてうつ伏せに寝かせ、律動を再開させる。
前立腺を擦りながら奥の壁までゆっくりとしたストロークで動いた。
「気持ちいい?」
「ぁ、ん、いぃ……っ、ゆっくりするの、好きっ」
彼がまだ話す余裕があるのがいい。
体を密着させ会話をしながら。こういう優しいセックスをしていたいよなぁと、前回のSMを思い出しては余計に感じる。
「あっ、い、く、いきそ、ぅん、ンッあ!」
「いいよ、イって」
俺が重なっているから上手く快感を逃がせないようで、俺の下で悶えている彼にキスをしながら、浬さんの感じる所をピンポイントで突いてやれば、彼はあっという間に達した。
「ひっ、ぁ、あっ、あ、や、いった、いってる……っぁ、イってる、からぁ……っ」
「ん、俺がまだだから頑張って」
「ああぁぁっ、ぁ、やぁっ、ぁ、お、ぅ、ん……──あ゛っ!」
奥にグポっと嵌る。
柔らかかった壁に包まれるような感覚。
僅かな水音で浬さんが潮を噴いていることに気づいて、彼の上から退いて片足を腕で持ち上げた。
そうすれば潮が出ているところが目に見えて余計興奮する。
「グポグポ、頑張ろうね」
「お゛ぉ、ぉ、いやっ、まっ……ぁ、あうぅぅっ!」
結腸に嵌めて抜いて、その動きを繰り返せば彼は白目を向いて体を反らし、ゼェゼェ呼吸をしながら何度も絶頂した。
何度目かのそれで一際強く締め付けられて、奥の奥に射精する。
搾り取るような内壁の動き。
ゆっくりペニスを引き抜いて、テラテラに濡れたそれを彼の口元に持っていけば、意識を朦朧とさせながらもフェラをしてくれる。
「ちぅ……ん、千暁ぃ……」
「ん?」
「お腹、ここ、ヒクヒクしてる……」
彼の手に導かれて、薄い腹に手を置く。
確かに若干動いているような?
興味本位で軽くそこをグッと押すと、浬さんは目を見開いて、少し遅れて射精した。
ビュクビュクと手にかかる精液。
「っひ、ひど、ぁ……っ」
「ごめんイくとは思わなかった」
「ぁ、あー……気持ちいい、お腹、これ、ハマりそう……」
「また今度してあげるね」
「んぅ、千暁、キスしてぇ」
甘えた声を出してキスを強請る彼。
いくらでもしてやるがなと夢中になってキスをした。
■
「──カット!」
カットがかかり、ハッとして浬さんとキスを止める。
やばい。本気で夢中になってセックスしてた。
「ぁ、千暁ぃ、なんで止めるのぉ」
「カット掛かったでしょ」
「えぇ……?」
どうやら浬さんも夢中になっていたらしい。
優しいビデオ撮りたいって言ってすぐ、それは実現された。
蕩けた顔をしてる浬さんの体をタオルで拭いて、優しくしたつもりだけれど念の為体が辛くないかの確認して。
「大丈夫そう?」
「うん。気持ちよかったぁ」
「シャワー行こっか」
「連れてって」
抱っこしろという彼を仕方なく抱き上げてシャワールームに運び、体を洗ってやってると、突然浬さんが俺の股間に手をやってしゃがみこみ、フェラを始めた。
「っえ、何で」
「千暁、一回しか出せてないでしょ」
「そうだけど、別に、満足してるし……」
「サービスしてあげる」
ジュボ、ジュボと音を立てて吸ったり舐めたり。
浬さんのテクニックは素晴らしいので、俺はあっさりと射精してしまう。
ちょっと情けない。いや、ちょっとじゃない。
彼の口の中に射精して、浬さんはそれを飲み込みアーと口を開けて見せた。
「ご馳走様」
「……スマセン。我慢できず」
「撮影じゃないからいいじゃん。」
彼も満足したのか、体を洗い終えるとシャワールームを出て体を拭き、ササッと服を着た。
「千暁も今日はこれで終わりだよね?違う現場に呼ばれたりしてる?」
「いや、今日はこれで終わりです。だから家まで送りますよ。」
「じゃあ何か食べてから帰ろうよ。」
「賛成。腹減った……」
スタッフさん達に挨拶をしてスタジオを出る。
乗ってきていた車で近くのカフェまで移動して、二人で軽く食事をして、浬さんを家まで送り別れた。
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