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第12話

つい先日浬さんをプリプリさせた俺は、本当に一週間彼の言うことを聞くことになった。 とは言っても浬さんの言うことはどれも可愛い事ばかりだ。 可愛さとえろさを兼ね備えた言うことを聞くこと、七日目。つまりは最終日である。 「ちあき、起こして」 「はいはい」 「そのまま俺の脳みそが活動しだすまで抱きしめてて」 「何それ。わかったけど」 朝目が覚めてまだ寝ぼけている浬さんを起こし、抱きしめたまま何をするわけでもなくぼんやりする。 彼の背中を撫でていると「それ寝ちゃう」と文句を受けてそれを止め、代わりにゆらゆら左右に揺れると「寝かす気か」とくすくす笑う浬さんにつっこまれた。 「千暁、今日はオフなんだっけ」 「うん。浬さんは朝一本だけ撮影なんでしょ?」 「……そうだった」 準備すると言って立ち上がった彼。 その様子を見てすぐにキッチンに向かい、勝手に冷蔵庫を確認し、軽めの朝ご飯を作る。 浬さんの支度が終わる頃、朝ご飯の支度が終わり、二人仲良く食べたあとはリラックスタイムである。 「今日の撮影はどんなの?」 「強制連続絶頂って書いてあった」 「あら。じゃあ帰ってきたらヘトヘトかな」 「朝からヘトヘトにされるの困るけど」 そろそろ行かなきゃと上着を羽織った彼について行き、キャップを被って車で現場まで送り届ける。 「迎えに来るから連絡してね」 「ありがと」 「無理しないでね」 「うん」 軽くキスをして、バイバイと手を振った。 これから仕事とはいえ、俺じゃない人に抱かれに行くのかぁと、小さくなる背中を見て少し寂しくなってしまう。 「んー、一回帰るか……」 車を発進させ、とりあえず一度自宅に帰った。 最近は浬さんとずっと一緒にいて家に帰れてなかったので、一先ず掃除機をあてて片付けをする。 片付けが終わったのは十一時で、さて買い物をしてそのまま浬さんを迎えに向かおうかなと、車のキーを手に取った。 浬さんが戻ってくるのはおそらく昼頃なので、家に帰ってからゆっくり昼食にする方がいいはず。 疲れてるだろうから、スタミナ料理でも作ろうか。 そんなことを考えながら家を出て車でスーパーに向かい、彼の好きそうな料理の材料を買った。 そのまま朝に彼を降ろした場所まで向かい、そこに着いたタイミングでスマホが鳴った。 画面を見れば浬さんからの着信で「もしもーし」と電話に出る。 「千暁ー? 今終わって、シャワー浴びたところなんだけど」 「朝、浬さんを降ろしたところにいるよ」 「あ、ホント? じゃあ行くね」 「大丈夫? 迎えに行かなくていい?」 「だいじょーぶ」 その通話から五分程度でやってきた浬さんは、体も特に辛くは無いのかササッと歩いて車に乗り込んできた。 「お疲れ様です」 「ありがと」 「何か飲みます? さっきスーパー行った時に買ったのあるけど」 「何買ったの?」 「飲み物と、帰ってお昼ご飯作ろうと思ってその材料」 後部席から飲み物を取り出そうとして、突然浬さんに抱きつかれた。 「どしたの? 飲み物とるけど」 「……なんか、ちょっと、こうしてたい」 「いいけど、嫌なことでもあった?」 「んー……。千暁、早く帰ろ」 「うん」 少し様子が変な浬さんが「飲み物は大丈夫」と言うので、体勢を直して浬さんの家に向かった。 「今日の現場のスタッフで、新人さんがいたんだけどね」 「うん」 「すごい世話焼いてくれんの。タオルとか水とか、終わったあともシャワーの準備とか、まあ色々」 「へえ」 「……有難いんだけどね、ちょっと変っていうか……」 「変?」 言うか言わまいか悩んでいる様子の彼。 言いたくないなら無理に聞かないでいようと変に促すようなことも言わないでいると、浬さんは眠たくなってきたのか背もたれを軽く倒した。 「眠い?」 「うん、眠たくなってきた」 「寝てていいよ。まあ、すぐ着くけど」 「ん」 目を閉じた彼はそのまま家に着くまで話すことはなかった。 □ 浬さんの家で昼食を作り、眠たいからちょっと寝てると言ってソファーに寝転がってた彼を起こす。 「ご飯食べよ」 「……ん、ありがとう」 眠たそうに目を擦る様子が愛らしい。 テーブルの席に連れて行けば、「美味しそうだぁ」と言って早速食べ始めた。 「うん、美味い。千暁は本当料理が上手だね」 「どこにお嫁に行っても恥ずかしくないでしょ」 「え、どこにお嫁に行くの」 「浬さんの」 「キャッ! すぐに籍入れよ!」 ふざけた会話を楽しみながら食事をし、一息ついたところで「さっきの話の続きなんだけどさ」と俺を見上げる彼に黙って頷く。 「新人さん、世話焼いてくれるの」 「うん。でもなんか変なんでしょ?」 「……触ってくんの」 「え、」 難しい顔をする浬さんは、あったことを思い出しながら話してくれる。 「シャワーも、なんか……一緒に入ってこようとしたり……」 「……」 「拒否したんだけど、シャワーの後待ち伏せされてて、タオルで拭かれるついでに色々触られた」 嫌そうに顔を歪める浬さんに、思わず同じような顔をしてしまう。 「俺がこういう仕事してて、誰とでも何でもすると思われたんだろうね。……まあ、他の人もそう思ってるだろうし、あんまり気にしない方が良いとはわかってるんだけど、流石に気持ち悪いなって」 「当たり前でしょ。それにこの仕事してるからってそういうことが許されていいわけじゃないし……。なんていう名前のスタッフ? 俺から社長に伝える」 「ああ、いいよ。こういうのやめてねって伝えたから」 浬さんは話をしたことでスッキリしたのか、さっきよりも表情が明るくなっているけれど、俺としてはそれは許したくない案件だ。 「嫌だ。次したらクビくらい言わなきゃまたやると思う」 「えー。クビは可哀想じゃん? 仕事柄仕方ないって思ってる方が良くない?」 「良くない」 「……。あとで何か仕返しされても怖いし」 「……」 確かに。 四六時中浬さんと一緒にいられる訳では無いので、後からもっと嫌なことが起きないという保証もない。 「平和な方法で解決しないといけないですね……」 「平和な方法?」 「うん。浬さんが誰彼構わずこういうことをするわけじゃないぞって……。あ、それか怖い人が傍に居るからなって教えたり……」 ウーン、と頭を悩ませていると、彼は何かを閃いたのかにっと笑って立ち上がり、俺の首に腕を回した。 「千暁がいるじゃーん!」 「いや……俺がいてもずっと守れる訳ではなくて」 「違う違う。俺の撮影終わった後にさ、千暁がたっぷり面倒見てよ。俺には恋人が居て、それが人気男優の千暁なんだぞって見せつけようよ」 頭の中にハテナマークが浮かぶ。 見せつけて、どうするというのだろうか。 「それで、どうするんですか?」 「セックスの上手い千暁に抱かれて蕩けちゃってる俺を見たらさ、自信なくして触ることもできないでしょ」 「……えっと?」 「シャワー室で新人さんに見せつけるように抱いて?」 何を想像しているのか、ほんのり赤くなっている彼の顔。 うっとりとした瞳がこちらを見つめて、そっとキスされる。 「あ、はい。抱きます。なんなら今からさせてください」 「よろこんで〜!」 それで解決するのか、とか、逆効果になったりしないか、とか。それは後で真剣に考えることにして、ペロッと唇を舐めてきた浬さんにキスをして、そっと腰を抱く。 「どこ触られたの」 「ん、お尻揉まれて、でも気持ちよくなくてね、むしろ痛かった」 新人は下手くそなのだろうか。 自然と眉間に皺が寄っていたようで、そこに彼の唇が触れ「顔怖いよ」とクスクス笑われる。 「ベッドでゆっくりしたいな」 「運びます」 浬さんを抱っこしてベッドに運ぶ。 その後は彼がトロトロになって気を失うまで抱いた。 夕方に目を覚ました彼に「俺、撮影した後だったのに手加減無しかよ」と小言を言われるくらいに。 □ 浬さんの撮影を見学していた。 今日はまだ優しいみたいで、浬さんが相手をリードして好きに動いている。 騎乗位の時のあの腰使いが堪んないな、と傍から見て興奮して、あっという間に撮影が終わった。 俺はスタッフからタオルと水を貰って我先に浬さんの元へ向かう。 すると後を追うように例の新人らしきスタッフがついてきた。 「お疲れ様です。水飲む?」 「うん。ありがと」 「シャワー室用意できてるみたいだから、行こっか」 「連れてって」 浬さんをタオルで包み、そっと抱き上げる。 耳元で彼が「今千暁についてきてる子だよ」と教えてくれたので、うんと頷いた。 「あ、あの、」 「はい?」 すると後ろから声を掛けられ、返事をしながら振り返る。 「あの、僕が連れていくので」 「ああ、いえ。大丈夫です」 「でも……あ、あれ、えっと……男優の千暁さん……?」 「そうです。じゃあ、浬さん連れて行きますね」 キョドっている新人を放置してシャワー室に向かう。 「そもそも千暁と俺が付き合ってるって噂知らないのかな」 「さあ……。でも知ってたら浬さんに手出します?」 「よく撮影であるじゃん。寝盗ってやろうって」 「え、俺が? プロなのに? 浬さんのことドロドロにできるの俺だけなのに寝盗られるの?」 「……有り得ないね。千暁とのセックスが一番好き」 「知ってる」 コソコソ話しながらシャワー室につき、そっと浬さんを下ろして服を脱ぐ。 「ついてくるかなぁ?」 「ついてきてもこなくてもシたいんですけど、いいですか」 「いいけど、どしたの?」 「さっきの撮影で浬さんが騎乗位してたでしょ。あの腰使いが最高でした」 「興奮した?」 「した」 正直に暴露すると「先に口洗う」と備え付けてある使い捨ての歯ブラシで歯磨きをし始める彼。 確かフェラしてたなと思い出して、そんな彼のお尻をムニムニと優しく揉みながら、すでに柔らかくなってる後孔に指を入れた。 「んむっ!」 「ゴム付けてたから大丈夫そうだね」 「ぅ、ちょ、っと待ってよ」 「口洗い終わったら教えて」 後孔をグチグチ弄っていると、そとからカタンと小さな音がした。 誰かが近くにいることに気付いて、あの新人か……? と思いながら指を動かす。 「はっ、ぁ、終わった!」 「うん」 「ちあき」 顔をこちらに向けた浬さんも、さっきの音に気付いていたのかドアの方を見つめていた。 「キスしよ」 「ん……ちゅ、ん……」 キスをして浬さんに壁に手をついてもらう。 「あぅ……」 既に勃起してるペニスの先端を後孔に宛てがい、焦らすように入口でぐぽぐぽと軽く入れたり出たりを繰り返していると、涙目になった彼に「挿れてっ」とお願いされた。 「ん、力抜いてて」 「っ、ふ、ふぅ……っ!、んっ、あ゛っ!」 奥まで一気に突いて、浬さんが堪え切れずに声を出す。 中がキューッと締まり、挿れただけで達したのがわかった。 「はは、もうイッたの?」 「あ゛……ァ、ま、待って、」 声が反響する。 きっと傍にいる新人には聞こえているだろう。 そして何をしているのかは何となく分かっているはずだ。 「千暁ぃ、きもち、ちんちん深いとこまできてて、気持ちいぃっ」 「撮影でここまで届かなかった?」 奥を揺らすように軽く動けば、短い悲鳴をあげて首を左右に振る。 「届かなぃ、ぁ、すご……んっ、きもちいっ、千暁っ、もっとしてぇ」 「うん、動くよ」 細い腰を掴み、ゆっくりと抜いて勢いよく奥を突く。 「あっ、あぁっ、ぁ、ん、はぁ……っ」 「浬さん、声おさえて」 「んぅっ、無理、ぁ、深いぃっ」 それを繰り返しながら乳首を抓り、首筋を舐める。 「あーッ、ぁ、いく、千暁、いく、イっちゃう……っ」 「ん、いいよ」 浬さんがビクビクと震えて絶頂する。 その時外からさっきよりも大きな音が聞こえ、ずるっとペニスを抜き、浬さんを床に座らせてからドアを開けた。 「あれ、スタッフさん? 何してんの」 「あ……ぁ、いや……」 やはり新人スタッフが股間を膨らましてそこに居た。 顔を赤くして、俺の奥にいる浬さんを見ている。 「あ、あの、浬さんは撮影の後で、疲れてると思うのですが」 「ん?」 「あ、あとは、僕が介抱しておくので、休ませてあげて、ください」 「えっと……ごめんね、何言ってるの」 「え?」 スタッフを一瞥してから浬さんの傍にしゃがみこむ。 「千暁ぃ」 「はいはい」 そっとキスをすると、浬さんの方から強請るように舌を絡めてきてそれに応える。 「あのね、浬さんと俺は付き合ってんの」 「え……」 「浬さん、立って」 そっと立ち上がらせ、浬さんの片足を腕に抱え、ゆっくりと蕩けた後孔にペニスを埋める。 「うぁっ、ぁ……!」 浬さんの体が細かく震えて、ギュッと抱きついてくる体を支えながら緩く奥を突く。 「あ、気持ちぃっ、千暁ぃ、もっとぉ……んっ、ぅ、ふ……ちゅ、ん……」 「ん……。ね、スタッフさん、俺の方が強請られてるの、わかる?」 お願いされてゴチゴチと奥を突けば、また達したのが中がギュッと締まり、堪えることなく射精した。 荒い呼吸を繰り返していると、彼の体が傾いて慌てて抱きとめ床に座る。 「浬さんっ!」 「ああ、イッて失神しただけだから大丈夫」 「っ、」 ペニスを抜いて、ペチペチと浬さんの頬を叩くとうっすら目を開けた彼が蕩けたように微笑んだ。 「気持ち、良かったぁ」 「満足した?」 「ん……でも、帰ってからも、楽しみだねぇ」 「じゃあ早く帰ろっか」 うっとりした顔で手にすり寄ってくる姿が可愛い。 新人君はといえば、振り返った時にはもう居なかった。 「……これで良いのかな」 「ん……まさかまたトぶとは思ってなかった……」 「俺もちょっと焦った」 「……中に出したの、出して」 「はいはい」 今度こそシャワーで体を綺麗にして、服を着た。 現場に戻ると新人君が居たけれど、目を合わすことは無い。 挨拶をしてから現場を出て、乗ってきた車にのれば浬さんは「んー!」と伸びをして俺の腕に抱きついた。 「やっぱ千暁とするのが一番いいや」 「俺のちんこが好きなんでしょ」 「はあ? 違うし。千暁が好きだし」 「うん。知ってる」 「……お前、俺で遊ぶようになったね」 「違うよ。浬さんが好きなだけ」 「知ってる!」 軽くキスをした後、ようやく浬さんの家に向かった。 それから数日後。 浬さんの現場にはまたあの新人スタッフがいたらしい。ただ、もう変に触られることはなかったようで安心した。なのだが。 「シャワー室でセックスしてたのバレて怒られちゃった!」 「あちゃ……」 理由はどうであれ、あんな場所でシちゃダメでしょ、他の人が仕事できなくなっちゃうからね、と社長に怒られてしまったのだった。

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