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第13話
「千暁、ご指名だよ」
「え」
ある日の朝、社長に呼び出され事務所に行き、社長に会った瞬間そう言われた。
しっかりと話を聞けば、どうやら悩んでいた那月君がジャンル幅を広げていくことに決めたらしく、その相手に俺を指名してくれたとか。
「やっぱりハード系ですか」
「うん。でも千暁は得意じゃないだろ? 別のハード系専門の人もいるよって言ったんだけど、千暁なら安心できるからって」
「まあ、指名されたからには頑張りますけど」
渡された台本には普段ならしない事が沢山。
あの那月君にこの内容が耐えられるのかがわからずに少し不安だ。
「怪我はさせないようにね」
「もちろんです」
「本気で辛そうだったら止めてあげて」
「わかりました」
さて、帰ったら少し勉強するか。
台本を読み込んで、どう動けばいいのか考えないと。
今日は浬さんの家に行くことなく、まっすぐ自宅に帰った。
□
ガチガチに緊張した様子の那月君。
その様子を見て、初めて会った時のことを思い出す。
「よ、よろしくお願いします……」
「うん。よろしくね」
柔く微笑むと、彼は少し泣きそうな笑顔を見せて「緊張してます」と分かりきったことを言った。
「ははっ、言われなくてもわかるよ。ガッチガチだし」
「う……下手だったら、ごめんなさい……」
「そんなの気にしないで。というか俺もハード系が得意なわけじゃないから……」
「泣いても止めないでくださいね」
「うん。あまりにも辛そうなら止めるけど。……あ、セーフワードでも決めとく?」
「セーフワード……」
不安そうな彼の背中を撫でて、落ち着くように深呼吸を促した。
「俺と浬さんのセーフワードは『死んじゃう』なんだけど、浬さんがそう言ったらすぐ中断するって決めてるんだ。那月君もそう言う合図があった方が安心でしょ」
「あ、はい……。えっと、何でもいいんですか?」
「うん。でも簡単に口にしなさそうな言葉の方がいいかな。判断しやすいし」
那月君はしばらく悩んで、けれど何も思いつかなかったらしく「同じでもいいですか……?」と目を潤ませながら聞いてくる。
「勿論。じゃあ本当に限界が来たら『死んじゃう』って言ってね。絶対に止めるから」
「はい……。ぁ、ちょっと、準備してきます……」
「はーい。ゆっくりで大丈夫だからね」
一人になって、セットの片隅に準備されている道具を確認した。
標準サイズと、それより少し太く長いディルド、そして一メートルは余裕でありそうな長くて柔らかいそれと、ブジーやらが沢山。
これ、那月君が見たらビビって動けなくなるんじゃないか……?
そう思って近くにいたスタッフに声を掛けると、すぐに布を掛けて隠してくれた。
「千暁君」
「はい」
監督に呼ばれて駆け寄れば、ウキウキしているのが丸わかりの表情で「よろしくね」と言われ、ウンと頷く。
「那月君が『死んじゃう』って言ったら止めます」
「わかった」
「あとは台本通りに進めるつもりですけど、他に何かありますか」
「特に無いけど、那月君が死んじゃわない程度に楽しませてね」
「わかりました」
少しすると那月君が戻ってきて、監督と少し話をしたあと二人でセットに入った。
「那月君、頑張ってね」
「っは、はい」
合図がかかる。
目を閉じて息を吐いて、ゆっくりと目を開ける。
スッと那月君を視界に撮した。
□
「まだ全然呑み込めてないぞ」
「ぶっ、うぅ……ぇ、ぁ、はぁ……っ」
標準サイズのディルドを那月君の口に突っ込んで、喉で扱く練習をさせる。
既に涙を流して苦しそうにしている彼は、抵抗できないように首と手が繋がるように拘束されていた。
「休むな、口開けろ」
「んひっ、ぁ、ごぇっ、ぁ、ぐぅっ……」
ディルドを全て飲み込ませ、ボコっとした喉を撫でる。
軽く白目を向いている彼は、ディルドが抜けると大きく嘔吐き、床に倒れ込んだ。
「はぁっ、は、 はぁー……っ」
「おい、座れ」
「んぅ、う……」
今度は一回り大きくて長いディルドを手に取り、上を向かせてゆっくりそれを飲み込ませる。
「ごぉぉっ、ぉ、ぇ……っ」
喉の輪っかに差し掛かったところで、首を振って逃げようとした彼の頬を叩き、無理矢理続けさせた。
「ほらあと少し」
「ぉ……ぁ……」
「……うん、上手」
全部を飲み込んだ彼は目を閉じて体を細かく震わせている。
何度か抽挿すると那月君が大きくビクッと跳ねて、触ってもいないペニスから精液を零した。
ディルドを抜くと、俯いて腰をビクビクさせている。
「喉虐められて気持ちよかったな」
「ぁ……ぁ、は、はい……気持ちいぃ……」
「じゃあ本番ね。俺の咥えて」
「は、い」
口を開けた那月君が勃起した俺のそれを咥える。
グチュグチュと音を立てて、ゆっくりと喉奥まで入れていく。
「ぶっ、ふ……」
「もっと」
「んっ、うぐぅ」
「もっとだって」
那月君の後頭部に手を添え、自分に押し付けるように力を入れる。
最後まで咥えた彼は、どこを見ているのか半分だけ目を開けて喉奥で扱いた後、ずるっとペニスを吐き出した。
「上手」
「ん、あ、ありがとう、ございます……」
喉奥の調教が終われば、今度は那月君を分娩代のようなものに座らせ、大きく足を開かせた状態で動けないように太腿と足首、それから腰を固定した。
ひくつく後孔が惜しげも無く晒されている。
指を入れると小さく声を漏らし、前立腺に触れれば足をガクガクと震わせた。
「ここにどこまで入るかな」
「ぁ、あ……っ」
指を抜いて、用意されていた長いディルドを手に取る。
細い先端を中に埋めて、そのまま進めていくと三割程度入れたところで那月君が震え出した。
「あぁっぁ、だめ、だめだめ、もう入んない、無理ぃっ、嫌っ、入んない……っ!」
「まだまだ入れるよ」
「んぐぅっ、あぁっ、だめぇっ! おかしくなるっ、ふかいからぁっ」
「息はいて」
「あ゛ぁっ、ぁ、い、た……っいたぃ、ぁ、あ゛ぁぁ……!」
つっかえていた部分が抜けると、さらに奥まで楽に入るようになった。
最後まで入る頃には那月君も「あ゛〜……」と言葉にならない声をもらしている。ディルドが出ないように手で押えながら、優しくキスをするとそれだけで達したのが、大きく震えて、一気に脱力した。
顔を見れば意識を飛ばしてしまったのか、目を閉じたままだ。
「起きて」
ペチペチ頬を叩くとゆっくり目を覚まして今の状況を理解すると、泣き出しそうな顔に変わる。
「お腹見て、ほら、ボコってしてる」
「ぅ、う……くるし、いぃ……っ」
「自分で出せる? 俺に抜いてほしい?」
「う゛ぅっ」
那月君のお腹を撫でて、まだ大丈夫かどうか確認する。
ポロッと涙を流して「自分で、する」とゆっくり力み出した。
「うっ、うぅ〜っ、ぁ、くるし、苦しいっ」
「頑張れ」
「ゃ、で、ない、でないぃっ」
頑張ってる姿が愛らしい。
けれど苦しくて辛そうにしているのが可哀想で、ちょこっと出ている部分をゆっくり引き抜いていく。
「あっ、あ゛ぁ〜っ!」
変に刺激されたのかチョロチョロとおもらししてしまっているのが可愛い。
足はつま先までピンと伸ばして、ガクガク震えている。
後孔から全部出たディルドを那月君の上に乗せ「これ入ってたんだよ」とほんのり笑えば、ヘロヘロになりながらそれを見下ろす彼。
「ぁ……す、ご……」
「すごいねぇ」
後孔がぽっかりと口を開けている。
物欲しそうにひくつくそこに指を入れ、ぐりっと前立腺を撫でた。
「あっ!」
「ちんこに栓して、メスイキ五回してみよっか」
「ひっぃ、い、や、やっ、」
「嫌じゃないだろ」
ヒグヒグと泣き出した那月君をカメラの外で宥め、前に特訓した尿道ブジーを手に取る。
「動くなよ……ってか、動けないか」
「うっ、こ、怖いぃっ」
「大丈夫大丈夫。ほら深呼吸しといて」
怖いせいかへにゃっとしてるペニスを掴み、尿道にブジーを宛てがう。
ゆっくりとそれを入れていくと彼の足がガクガクと震え始めた。
「うっ、だめ! ぃ、た、ぁ、あーっ、だめ、くる、やだ、やぁ……っあ!」
「お、前立腺届いた?」
「ひぅ、ひっ、ひ、」
首を反らして痛みと快楽に混乱しているのか、荒い呼吸を繰り返すばかりで返事はない。
仕方ないかと後孔に指を埋めて前立腺を撫でると「お゛ぉっ」と汚い声を出して体を痙攣させる。
「い゛っ、てる……いって、ます……やめ、ぁ、待ってぇ、ぁ、イッてるからぁっ! ぁ、やだぁっ!」
「一回目」
「あ゛ぁ゛っ! やだ、やめ、やめて、おかしいっ、ぁ……変、おっ、おぉ……っ」
「あと四回だよ。頑張って」
セーフワードは聞こえない。
それなら台本通りに続けるしかないので、容赦なく責めた。
そのうちまた意識を飛ばした彼を起こして、五回のメスイキを終えた後、ブジーを抜いてやれば勢いのない精液を漏らしている。
「はぁ……ぁ……」
「そのまま力抜いてろ」
緩くなった後孔に四本指を入れ、中の具合を確かめてから指を抜き、手を窄めて手首まで埋めていく。
「あ゛ぁっ! き、ついぃっ」
「手首まで入ったよ」
「や゛ぁっ」
さすがにこれ以上入れるのは厳しそうで、その辺りで数回出し入れした後、手を抜いた。
拘束を外して台から降ろす。
フラフラで立っていられなさそうな彼をベッドに運び、うつ伏せに寝かせてお尻をムギュっと掴む。
左右に開けると相変わらずヒクヒクしている後孔に、今度は勃起したペニスをあてがった。
ゆっくりと味わうように奥まで挿入すると、それだけで那月君は絶頂する。震える体にキスをして、奥の壁を軽く突くと、ピチャピチャと水音がした。
「あーあ、潮吹いてんじゃん」
「ぅ、う……っ」
壁を撫でるように腰を動かし、壊れたように続けて絶頂する那月君に内心『ごめんね』と思いながら、ゴチゴチと律動を始める。
「ひぃ──ッッ!」
「あー、気持ちいい」
あんなに虐めたのにキツい。
那月君は変わらず泣きながら声を漏らし、再び絶頂したのを確認してペニスを抜いた。
うつ伏せの彼を起こして、ベッドヘッドが背もたれになるように座る。
「自分でいれて」
「んっ、」
泣き顔のまま向き合うと、心細いのかキスをされて、その可愛さに舌を絡めて答えていると、ちゃんと自分でペニスを埋めていく彼。
最後まで入るとまたプシャッと潮を吹き、俺の体を濡らす。
「あ……ご、めん、なさいぃ……」
「動いて」
「んっ、は、ひっ、ぁ……」
ユラユラ腰を揺らす彼はもうほとんど限界のようで、焦点が合っていない。
初めてのハード系なのに鬼畜すぎたかもしれないなと、少し反省しながら緩く律動した。
「きゃぁ……っん、ぁ、ぉ、ぉぉ……っ」
「上手だ。こっち扱いてあげる」
「んひぃっ、ぃ、あっ! ぁ、きもち、いい……っ」
ペニスを扱いてあげると腰を動かすリズムが速くなった。
「あっ、あんっ、ぁ、いく……イ、くぅ……っ!」
「っ、」
ガクンガクンと大きく痙攣した那月君。俺もきつい締めつけに中に射精した。
そのまま彼はこちらにもたれてくる。
また失神したようで、ゆっくりベッドに寝かせてからペニスを抜く。
「おぉ、」
途端プシャッとまた潮を吹いた彼が映され、広がった後孔から精液が垂れる様子もカメラに撮られた。
そして、ここでようやく撮影が終了。
慌てて那月君を起こせば、まだ撮影中だと勘違いしているようで、いよいよ派手に泣き出した。
「うぅっ、千暁さ、も、もう無理、頭、変になるから、挿れないで……っ」
「撮影は終わったよ。挿れないし、もう苦しいのも痛いのも無いよ」
「あうぅっ、ぁ、おしっこ、漏れる……」
「あ、うん。いいよ、大丈夫大丈夫」
泣き続ける那月君を抱きしめて、背中を撫でる。
温かいのが足元に広がるけど気にせず、那月君が少し落ち着いてから一緒にシャワー室に移動した。
体を流してあげている途中でようやく意識がはっきりしたみたいで、真っ赤な顔をして「ごめんなさい」と何度も謝ってくる彼に苦笑を零す。
「いや、俺こそごめんね。辛かったよね」
「あの……長いのが、あれが辛くて、」
「だよね。頑張れてすごいよ」
「ち、千暁さん、だから、頑張れたんです……」
「……え、なんで?」
チラっとこちらを見た彼は、恥ずかしそうにすぐ視線を逸らした。
「千暁さんは、絶対に俺が本当に辛い時は止めてくれるから」
「……」
「セーフワード言わなくても、多分、わかってくれるとか思って」
「セーフワードは言って貰える方がタイミング間違えないから有難いんだけどね」
「でも、大丈夫だったから……んー……だめ、まだ頭回んない」
フラフラする那月君を抱きとめ、体を綺麗にした後に服を着せてあげる。
「家帰れる? マネージャーさんは? 迎えに来る?」
「ん……浬さんに会いたいです……」
「え、浬さん? 何で?」
「がんばったから、褒めてほしい」
同じネコとして、先輩の浬さんに褒めてほしいらしい。
とっても頑張った彼にそれくらいのご褒美ならいくらでもあげたい。
「じゃあ浬さんに連絡してみるよ」
「はい。……寝そうです」
「いいよ。また起こすけど」
「ん……」
俺にもたれて目を閉じた那月君。
構わず浬さんに電話をすると、ちょうど家にいるらしくこのまま彼の家に向かうことにした。
スヤスヤお眠状態の那月君の手を取り、一緒に車に乗る。
浬さんの家に着く頃には眠気の取れたらしい那月君は、浬さんを見ると泣きながら抱きつきに行っていた。
「おぉ、どうしたの」
「浬さぁん」
「んー? 撮影頑張ったんだってね。偉いね」
「苦しかったです……」
「うんうん。お疲れ様。こっちで休みな」
浬さんに甘えてる那月君は、撮影のことを話すとスイッチが切れたように寝てしまい、俺も浬さんもふっと笑って静かに会話する。
「それで、上手くできたの?」
「最後までちゃんとできたよ」
「よかったね。売れそう?」
「売れなきゃ困る。那月君があんなに頑張ったのに」
「そうなんだ。気になるから俺も見よ」
「うん。可愛いから見てあげて」
浬さんは優しく那月の頭を撫でる。
さっきまでとは違う柔らかくて穏やか時間に、俺もようやく力が抜けたのだった。
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