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プライステイスト12

 しばらくその光景を眺め、ふとフライパンで焼いていた鶏肉の存在を思い出す。普通の足取りで戻っていき、再びその前に立つ。  蓋を開け、湯気と共に香ばしいにおいが放たれる。はぁ、と溜め息を漏らしながら火を止めて皿に盛り付けていく。皿の中央に並べられたそこにフライパンに残った液体を掛けるが、周囲には余白がかなりあった。  まな板のところまで行くと、水気を切っていたレタスを手でちぎり、その上にトマトを並べていく。  野菜で囲われた鶏肉が完成し、心を踊らせながら運んでいく。  テーブルの上は徐々に彩りが増えていき、華やかなものへと変化している。まるで、タクトの心を表しているようだ。  残り一つの料理のために再度キッチンへと戻る。まだ焼き上がりまで少々時間が掛かるようで、手持ち無沙汰になったために広げていた調味料を元の位置に戻し始めた。使った痕跡のないようなきれい状態にしているようで、時間を掛けているようだった。  だが、あまり数を出していなかったためすぐに終わってしまった。どうしたものか、と考えていると玄関からガチャガチャと音がした。

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