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プライステイスト18
そう言いながら、コウの手はタクトが作ったチキンへと伸びていた。タレを絡ませながら、一切れ口に入れて味わう。
「でも、自分の好みのワインを選ぶセンスはねぇが、ワインに合う料理は悪くないな」
「ほんと!? 美味しい?」
「あぁ。俺的にはもう少しにんにくを減らしてほしいがな」
コウに自分の料理を褒められたことにより元気を取り戻したタクト。自分で作ったものを味わいながら、再びワインを口にした。
料理の口直しになったのか、いくらか表情は和らいでいたがそれでもまだ赤ワインの味わいに慣れていないようだ。何度も肉を食べながら、少しずつ飲んでいる。
「タクト、ちょっと待ってろ」
見ていられなくなったコウがそう言いながら立ち上がり、キッチンへと向かった。食器棚からマドラーを取り出してから冷蔵庫を開け、寝かせてあったペットボトルを一本取り出す。それはジンジャーエールであった。
席へ戻り、彼の言い付け通りきちんと待っていたタクトのグラスに、残っていたワインと同量のジンジャーエールを入れる。そこへゆっくりとマドラーを入れてかき混ぜる。
「ほら、これならお前でも飲めるだろ」
差し出されたグラスをゆっくりと近付け、恐る恐る口にする。タクトの口の中に入った瞬間、そこから甘みが広がっていき、彼の表情が一気に晴れやかになっていく。そして一気に半分ほど飲み干した。
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