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秘密の味6

 たまに無言で片付けているように思われていることがある。しかし、俺はただひたすら味わっているだけだ。  それがつい他人の分まで食べてしまうこともあるだけである。  そう言い返すと、大抵の人は笑って受け入れてくれ、このメンバーに限っては俺が多く食べることを暗黙の了解としていた。  今日の料理は本当にどれも美味しい。早くこの鍋も味わいたい。  そんなことを考えながら、鍋の中身をひっくり返している店員の手付きを眺めていた。少しくったりとした野菜、色が変わっていく肉、火が通っている証拠だ。  ただの下準備を眺めているだけでも十分酒のつまみになったようで、店員が去っていくと同時に俺はグラスを空にした。いつもより早く飲みすぎてしまったかな、と少し軽くなった気がする頭で考えていた。  沸騰に近付いてぐつぐつとしてきた鍋を眺めていると、誰かが新たに運ばれてきたグラスを俺の前に置いてくれた。 「もうそろそろ大丈夫か?」  鍋の目の前に座っている山本さんが全体を確認しながら、カセットコンロの火を止める。肉、野菜、豆腐、汁をバランスよく入れ、順番に渡していく。最後に俺の目の前に置いてくれた。

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