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秘密の味14
何度か二人でこの道を通って帰ってきたこともあったが、急ぎ足で家に向かっていた印象しか残っていない。
たまにはこうしてゆっくりと歩くのも悪くないと思った。
微妙な高低差の続く真っ直ぐな道のり。街灯が並んでおりそこまで暗くはないが、夜はほとんど人が通らないために少々物騒にも感じられる。
「司 ぁ……」
不意に俺の名前を呼んできた。人前では名字で呼ぶくせに、酔って二人きりになるとこうして呼んでくる。二人きりであればいつもこうされたいものだ。
「なーに?」
「疲れた。歩けない」
「えっ……」
そう言うと、歩くのを止めてしまった。細い身体はそこまで重くないものの、引っ張っていくには限界があった。
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