105 / 214
秘密の味22
まるで猫のように膝の上で転がり続ける。こんな姿を見るのは正直初めてだ。
思わず俺は頭を撫でていた。
その感覚ですらすんなりと受け入れ、俺に甘えてきているように思える。
これが可愛いというものなのか。
俺もこの感覚にすっかり虜になってしまい、ずっと撫で続けていた。
猫を撫でながら優雅に酒を飲んでいる気分だった。思わず俺の酒のペースが上がってしまう。
空になったコップに残りを注ぎ、ボトルを床に置く。大した量ではないものの、原液を飲んでいるようなものなのでさすがに少し酔ってきた。
すると、少し手を離したところで金森さんがゴロリと上を向いた。それに気付かずに撫でようとしたら、思い切り手を払われた。
「あいたっ」
どうやら顔を塞いでいたようで、少し機嫌が悪そうな顔をしていた。
「ごめんごめん」
無言のまま睨みつけるようにこちらを見てくる。俺も無言のまま見つめ返す。
音のない時間がしばらく続いた。こうして見ると、少しは酔いが覚めたのかもしれない。
ともだちにシェアしよう!