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秘密の味33
正直俺も、こんなことは今までなかったので少々驚いた。これが本来求めていたことなのかと思わなくもない。
俺は安心させるためにクッションを置き、立ち上がってこの人に近付く。そして、逃げようと後ずさりする身体をぎゅっと抱き締めた。
「俺、カナさんが積極的に愛情表現してくれて嬉しかったよ。ちゃんと受け止めたから」
「そ、うか……」
ゆっくりと俺の背中に何か感触が伝わってくる。この人が抱き返してくれている感触だ。
昨日のにおいが若干残るそこに顔を埋め、温もりをより求めて感じていく。
朝からこんなに感じていられるなんて幸せでしかない。嬉しさに思わず抱き締める力が強くなっていた。
すると、背中を両手で叩かれて無理矢理離されてしまった。
「お前はっ……何でもかんでも大袈裟すぎる」
「そんなつもりはないのにー」
「とにかく、俺には苦しかった。あと臭い。シャワー浴びてこい」
「臭いのは仕方ないから」
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