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いつかのさけ15
「俺、そんなにモテてました……? まぁ、普通に出掛けるのは楽しいっすけど。でも今は、男友達と飯食ってる方が楽しいっすね。これからは岡崎さんの会っていう楽しみもできましたし、それに……」
急に手に込められた力が強くなり、彼の瞳は岡崎を見据えていた。
「俺、岡崎さんのお酒の話聞いてるの、すっごく楽しいんで! 予定断ってこっちに早く来ればよかったって後悔してるんです」
「後悔って、そんな大袈裟な……」
桂木の勢いに若干岡崎が引いていた。それでも、彼の目の輝きだけは全く失われていなかった。
もうすでに酔っ払ってこんなことを言っているのではないかと疑いながら桂木を眺めているが、全然酔った気配はなく全て本気のようである。
「ふぅ。桂木の熱意に俺まで熱くなりそうだよ。俺くらい詳しくなってデートでも行くのか?」
「そっ、それは、ないっす。ただ単に岡崎さんみたいになりたいなって……」
少し視線を逸らしながらお猪口に残っていた酒を一気に煽る。そしてグラスを注視しながら再び注いでいく。
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