162 / 214
いつかのさけ36
それだけ残して桂木は去っていった。
自分たちが色々考えてここにいるという苦労を一切理解していないという様子に、怒りのような感情を抱いたがそれもすぐにどこかへ行ってしまった。
桂木の自然な様子を見ていると、そんなことなどどうでもよくなってしまっていたのだった。
クスクスと二人で笑いながら結論はまとまっていた。
「一旦戻りますか」
「鍋……」
二人は同時に立ち上がり、何事もなかったかのように席へと戻っていった。
そこには、半分より多く食べつくされた鍋と一人酒を嗜んでいる岡崎がいるだけである。
戻ってきた二人の姿を見つけるなり、笑みを浮かべて座るように促した。
「遅かったな」
「ヤニ吸ってました。あ、まだ鍋残ってたんですね」
「おう。冷めてきたから少し温めるか」
ともだちにシェアしよう!