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いつかのさけ37
コンロの火を付けて再び熱する。
中途半端に温まっていたため、強火ですぐに火が通っていく。汁がぐつぐつと言い出すと、若松の手はすぐに伸びていた。
かなり食べてきたとは思えない量をよそうと、勢い衰えずにどんどん口にしていく。
そしてようやく片倉は鍋を口にすることができた。他の三人にかなりを食べられてきたので、あんこうは小さいものばかりしか残っていなかったが、丁寧に拾い上げていく。そうして鍋には野菜のみが残っていた。
若松が半分ほど食べきったところで、ようやく片倉も口にしていた。
煮えて味が少し濃くなっていたようだったが、それでも絶妙な味わいは彼を唸らせた。飲みかけだった酒にも手が伸びていく。
そうして二人はあっという間に酒まで飲み尽くしてしまった。
若松は、片倉が残していた野菜を全て掬い、鍋の中を汁だけにしてしまった。
そこへ桂木が戻ってきた。
「あれ、もう鍋終わっちゃった?」
「俺ので最後」
「まぁまぁ。鍋といえば最後はシメだろ」
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