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ロマンティック・プランク1
「いらっしゃいませ」
客もまだらな静かな店内に響き渡る物静かなその声は、店員によるものであった。
ドアからは仕事を終えたといった装いの男二人が入っていき、彼らが来たことによって店員が口を開いたようだった。
彼らはバーカウンターの端の方に座った。
「今日は誘っていただいてありがとう、柊 さん」
「いえいえ。こちらこそ、仕事終わりなのに来てくれてありがとう。今日は奢るよ。杏里 くんはバーが初めてだって言ってたね」
「はい。あんまりお洒落なところで食事することがないんで……」
恥ずかしそうにそう語る杏里。だが、緊張の中には楽しみにしていたといった様子も含まれていた。
それを感じ取ったのか、柊はそっとメニューを差し出した。
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