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ロマンティック・プランク8
遠慮しているということがはっきりと伝わったようで、柊は深く追求することなく流していた。
柊の視線が杏里から離れて店員の方へと向いていくと、少し緊張がほぐれたようで少し力が抜けた姿勢となった。それでもまだじっくりと味わうには程遠かったようだ。
注文を終え、再び杏里の方を向くと、自分と視線を合わせてくれない姿を見て思わず手を伸ばしていた。ゆっくりと、杏里の膝の上に置かれている彼の手にそっと触れる。
いきなりのことに驚き、ビクリと大きく身体を震わせた杏里は、おずおずと柊の方を見る。
「杏里くん、いつもみたいに緊張しなくていいよ。今はただ美味しくお酒を飲むだけ」
「いえ……そんなつもりじゃ……。柊さん、いつもよりかっこよく見えるし……」
思いがけないその言葉に、彼の手に触れている柊の手がぎゅっと握られる。
「ひっ、柊さん……」
「嫌、だった?」
「そ、そんなことはないけど……。ちょっと、恥ずかしい……」
「そんなに気にしなくても大丈夫だよ。薄暗いから他の人には見えないから」
「う、うん……」
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