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ロマンティック・プランク9
杏里は、ゆっくりと柊の指に自らの指を絡ませていき、その体温を少しずつ感じている。そっと触れる指先から、安心感を少しずつ得ているようにも思える。
まだ頬は少し赤みを帯びているが、落ち着きを取り戻している様子で、熱心に柊の手を眺めながら触れていた。
そんな光景に、触れられている本人は微笑ましさを感じていた。
しばらくはじっと眺めていたが、ふと柊の手がぎゅっと杏里の手を掴んだ。そしてその手を自分の口元に近付けていき、杏里の指先に軽く口付けする。
大胆な行動に、思わず手を振り払ってしまった杏里。すぐに口を開いたが、その視線は柊とは別の方向を向いていた。
「あっ、ご、ごめんなさい……」
「大丈夫だよ。僕の方こそ、突然こんなことをして驚かせてしまったね」
「嫌じゃ、ないけど、二人っきりのときの方がいい……」
「分かったよ」
そう言って柊の手はゆっくりと離されていった。
しかし、離れていく温もりが恋しいのか、杏里の表情はどこか物寂しさを醸し出していた。自分で言ったこととはいえ、その胸の内には後悔が残されていた。
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