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ロマンティック・プランク16

「杏里くん」  不意に柊に呼ばれて彼の方を振り返る。  すると、右手が口元に伸ばされていき口の端に触れる。キュッと親指でそこを拭い、柊の口元へと運ばれていく。 「チーズ、付いてたよ」 「はぁっ……」  だが、食べ物が付いていたことよりも柊の行動に杏里の顔が一気に真っ赤になる。せっかくほぐれていた緊張感が、一気に戻されていく。  あわあわとその場で動けずにいる杏里の姿に、隣りにいる柊はただ眺めているだけであった。  下手に触れてしまえば再び緊張してしまうと察し、笑顔を崩さないままどうしようかと悩んでいた。  すると、注文したものを持った店員がやって来て存在感を消しながら差し出してきた。  柊の方をちらりと見ると、上手くいくように、といった視線を送る。  ギクリと背筋を正しつつ、どうにかしようという気持ちが高まったようだ。 「杏里くん、注文したものが来たみたいだよ」 「……あっ、はい」

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