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ロマンティック・プランク20
杏里はそう言うと、繋いだ手を離そうとせずに酒を飲んでいく。煩わしさは一切感じられず、むしろずっと同じ格好でいたいと思っているようだ。
柊も繋いだ手を離そうとせず、杏里の様子を確認しながらゆっくりと飲んでいた。気付けば彼のグラスの中身は半分程度まで減っていた。
とうとう柊の身体も酔いが回ってきたのか、感覚が少し鈍っているように感じていた。
そんな中でも、杏里の温もりだけははっきりと感じていた。
「杏里くんは、友達と飲み行くことはないのかな?」
「ほとんど行かないな……」
「何かあったの?」
「ビールが美味しくなかったし、ジントニックが水みたいだった。初めてがそんな感じだったから、今までお酒飲んでないよ。あ、ここのお店のは美味しいよ」
「そうだったんだね。今日は気に入ってくれてよかったよ」
「柊さんが選んでくれるもの、全部飲み慣れたやつみたいで美味しい」
柔らかい笑顔を向け、そのままじっと見つめる。
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