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ロマンティック・プランク21

 それに思わず、柊の手が杏里の方へと伸びていき、頭を抱き寄せる。  顔をうずめるように抱かれる状態になり、一瞬驚いた杏里であったが、間近に感じる柊に安堵する。  自らを擦り付けるように少し顔を動かす杏里。すると、くるりと顔を動かしてもたれ掛かるような格好になる。  柊の手は離され、グラスへと移動されていく。杏里を身体で感じながら、ゆっくりと酒を口にしていく。  二人とも言葉を交わそうとせず、ただじっとしているだけであった。  そのうちに、飾りのように店の空気に馴染んでいき、気配が消えていった。  杏里の目がゆっくりと閉じられていき、代わりのように口が開かれていく。 「柊さん、そろそろ誤魔化しなしで聞いてもいい?」  声は普段通りの柔らかい感じであったが、言葉の奥に鋭さが含められていた。  思わず柊はビクリと身体を反応させてしまった。 「………やっぱり、何かあるんだ」 「そ、それは……」  柊の表情に焦りと緊張が走る。今まで饒舌だった言葉が急につっかえ、杏里の疑うような視線が向けられる。  それでも、柊の口からはこれ以上何も出てこなかった。

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