200 / 214

ロマンティック・プランク29

 すると、杏里の手がもぞもぞと動かされていく。するりと移動されていくその手は、柊を抱き返すように背中へと回されていった。  鼻をすすりながら見上げるようにし、潤んだ瞳で柊の顔を見つめる。 「柊さん……。俺を、柊さんの恋人にしてください……」  その返答を聞けた柊の腕に込められている力が強くなり、さらにぎゅっと抱き締められていく。  杏里もそれに応えるように、ぎゅっと抱き締める。 「柊さん……」 「どうしたの?」 「なんだか、柊さんと一緒にいたいな……」 「じゃあ、僕の家へおいで。今夜は帰さないよ」  名残惜しそうに柊の腕が離され、そのまま優しく杏里を導きながら、二人はこの場を去って歩いていった。  二人の姿は人混みに紛れるように馴染んでいった。

ともだちにシェアしよう!