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第一章・7

 初夏とはいえ、まだ肌寒い海風。  例のいかがわしいスイムパンツの上にパーカーを羽織って、蓮は撮影現場へ現れた。 「よろしく、篠原くん」 「可愛く撮るからね!」 「張り切って行こう!」  スタッフに励まされ、蓮は少しだけ顔を上げた。  すると、ラフな服装の男たちの中に、一人だけスーツで身を固めた人がいる。  違和感を覚えていると、五木が紹介してくれた。 「篠原くん。この方、うちの大口スポンサーで、加賀 巴(かが ともえ)さんだ」 「加賀さん、って。あの」 『いい子だ。期待してるよ』  五木のスマホに、即反応してくれた人だ。  長めのジェントルマンヘアに、スクエアフレームのサングラスを掛けている。  鼻も口もしっかりとした、無骨な印象だ。  体格も良く、周囲のスタッフより頭一つ分背が高い。 「加賀だ。よろしく」  だが、サングラスを取った眼差しは、優しかった。

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