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第一章・9
ぎこちない仕草に、とまどう笑顔。
そんな蓮だったが、五木は満足だった。
「いいね! その初々しい感じ、前面に出しちゃって!」
だがしかし。
(こんな水着で、加賀さんの前にいるなんて!)
恥ずかしいよぅ!
せめて濡れないようにと頑張っていたが、波に脚を取られてつい腰をついてしまった。
波は、容赦なく蓮を濡らす。
パーカーも海水を吸って、重くなってしまった。
「はい、篠原くん! パーカー、脱いでみようか!」
「は、はい」
蓮は覚悟を決めてパーカーを脱ぎ、スタッフに渡した。
滑らかなその肢体が、太陽の元にさらされる。
恥ずかしい。
恥ずかしい、けど。
これが僕の、今できる精一杯のことなんだ!
巴の見守る中、蓮の撮影は続いていった。
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