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第二章 君は私の推しだ
波打ち際で遊ぶ蓮を、撮影班は撮っていた。
「だいぶ、表情が出て来たと思わないか?」
「いい感じで、リラックスできてるよ」
スタッフの言うように、蓮は海を楽しんでいた。
(海で遊ぶの、初めて!)
日差しも、波の冷たさも。
砂の熱さも、拾う貝も。
全てが、楽しい。
そんな蓮を眺める巴は、胸が疼いて仕方がなかった。
「画像は、もう充分撮ったのかな」
「これくらいあれば、いけますよ」
では、と彼はいきなり革靴と靴下を脱いだ。
スーツの裾もたくし上げ、海に向かって。
いや、蓮に向かって駆けだした。
「加賀さん!?」
「一緒に遊びたくなってね」
そう言うと、手で波をすくって蓮にかけた。
「わぁ、冷たい!」
「ほら、そこにカニがいるぞ」
「あ、ホントだ。可愛い!」
じゃれ合う二人を、スタッフは撮り続けた。
「篠原くん、マジで加賀さんのお気に入りだね」
「いい画が撮れるぞ!」
撮影が終わった時、蓮は心からの笑顔をこぼしていた。
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