10 / 80

第二章 君は私の推しだ

 波打ち際で遊ぶ蓮を、撮影班は撮っていた。 「だいぶ、表情が出て来たと思わないか?」 「いい感じで、リラックスできてるよ」  スタッフの言うように、蓮は海を楽しんでいた。 (海で遊ぶの、初めて!)  日差しも、波の冷たさも。  砂の熱さも、拾う貝も。  全てが、楽しい。  そんな蓮を眺める巴は、胸が疼いて仕方がなかった。 「画像は、もう充分撮ったのかな」 「これくらいあれば、いけますよ」  では、と彼はいきなり革靴と靴下を脱いだ。  スーツの裾もたくし上げ、海に向かって。  いや、蓮に向かって駆けだした。 「加賀さん!?」 「一緒に遊びたくなってね」  そう言うと、手で波をすくって蓮にかけた。 「わぁ、冷たい!」 「ほら、そこにカニがいるぞ」 「あ、ホントだ。可愛い!」  じゃれ合う二人を、スタッフは撮り続けた。 「篠原くん、マジで加賀さんのお気に入りだね」 「いい画が撮れるぞ!」  撮影が終わった時、蓮は心からの笑顔をこぼしていた。

ともだちにシェアしよう!