12 / 80

第二章・3

「篠原くん。今、独り暮らし?」 「え? はい」 「だったら、加賀さんがマンション貸してあげる、って言ってるよ!」 「マンション!?」  スタッフが差し出した携帯に出ると、そこにはあの低い優しい声があった。 『篠原くんが良かったら、私の空き部屋を使って欲しいんだが』 「でも、お家賃とか」 『要らないよ。資産運用で買ったものだし。誰か住んでくれていた方が、いいし』 「どうして、そんなに良くしてくださるんですか?」  そこで巴は、いったん言葉を切った。  息を吐き出しながら、言った。  電話越しの息は、熱を持っているかのようだった。 『私はね、篠原くんを推してるんだよ』 「お、推し?」 『そう。君は、私の推しだ』  後は、引っ越しの話など一方的に済ませて、巴は通話を切ってしまった。

ともだちにシェアしよう!