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第二章・5
端末を切って通話を終えた巴は、溜息をついた。
「何て愛らしい声だ……」
まいった。
加賀 巴、この年齢でこんな感情に揺さぶられるとは!
そっと、デスクの私用パソコンを開く。
待機画面には、さっそく転送してもらった蓮の画像が笑っている。
「可愛すぎるだろう、これは……」
思わず、目頭を押さえてしまう。
これまで、ヴァニラ・クリエイトに出資をしてきた。
なかなかヒットの出ないB級サイトには、そろそろ見切りを付けようと思っていたのに。
「とんだ上玉を、掘り当てて来たものだ」
そこへ、社長室のドアをノックする音が響いた。
慌ててパソコンを閉じ、巴は低い声を出した。
「入れ」
「組長、ご報告が」
「社長、と呼べ」
「し、失礼しました。社長、ご報告が」
看板を下ろしたとはいえ、いまだ体質の抜けない組員もいる。
巴の前身は、極道の四代目だったのだ。
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