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第三章・8
「蓮。すまないが、背中を流してくれないか」
「はーい」
ぱたぱたと駆けてくる、可愛い少年。
蓮、どうか。
どうか、私を拒否しないでくれ。
バスルームのドアを開け、一歩踏み込んだ蓮は息を飲んだ。
むき出しの巴の背には、極彩色の彫り物が施されていたのだ。
「加賀さん、あなたは……」
「どうか、怖がらないでくれ。私はもう、極道からは足を洗ったんだ」
どうしよう。
どう、反応すればいいんだろう。
いつも、ぴしりとスーツを着こなしている加賀さん。
そんな彼が服を脱ぐと、こんな秘密があったなんて!
でも……。
蓮は、スポンジにシャボンを作ると、巴の背中をそっと洗い始めた。
「蓮」
「背中に絵が描いてあっても、加賀さんは僕の好きな加賀さんのままです」
「ありがとう……」
巴は、心から安堵していた。
蓮を、怖がらせずに済んだ。
彼は、そのままの私を受け入れてくれた。
何より嬉しい、ことだった。
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