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第五章・8

「こんな気持ちは、初めてだ」  今まで、推し活をやっては気の張りを保ってきた。  その手に抱いた、推しもいる。  だが、蓮は特別だ。  単なる推しでは、なくなってきている。 「私は、恋をしたのか? この一回りも年下の子に」  いいのかな、と額に手を当てる。 「私なんかが、蓮を好きになってもいいのかな」 『君の、良くない癖だ。もう『僕なんか』と言うのは止した方がいい』  以前、巴が蓮に贈った言葉だ。  まさか、自分に跳ね返ってくるとは。  蓮は、私に好意を持ってくれている。  現に、こうやって体を任せてくれたじゃないか。 「だったら。だったら、彼を正式に恋人に……」  そこまで考えて、頭を抱えた。 「推しが。推しが、そのまま恋人に、とか……!」  恥ずかしい、恐れ多い、もったいない。  複雑な感情が、入り乱れる。 「とにかく、今夜はもう寝よう」  そして、明日。 「明日、蓮に訊いてみよう」  私と付き合ってくれないか、と。

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