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第六章・4

「いい作品だったな」 「僕、感動しました」  まだ目の少し赤い蓮は、パンフレットを片手に喜びを噛みしめている。  映画館、楽しかった。  作品も、素敵だった。  なにより、巴さんと一緒に観られたのが、良かった! 「ハンカチ、洗って返しますから」 「気にしないでいいのに」  その後は、気の張らないフレンチで、ランチ。  少しショッピングをして、お茶。  最後に巴は、花屋に立ち寄った。 「お花、買うんですか?」 「うん。ちょっとね」  深紅のバラを、18本。  蓮の、年齢の数だけ選んだ。  花束にしてもらい、大切に腕に抱いた。

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