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第六章・5
駐車場で待っているアウディに乗り込むと、巴はバラの花束を蓮に差し出した。
「これを、君に」
「ぼ、僕ですか!?」
正直、巴はこの後誰かとディナーを一緒に過ごすのか、と思っていた。
やっぱり僕なんかより、誰かもっと素敵な人がいるんだ、と思っていた。
巴は巴で、映画を観ながら考えていた。
一言。
一言でいいから勇気を出して、付き合って欲しい、と言えればと。
(花まで買えば、もう後戻りはできないからな)
「蓮。良かったら、私と。その、付き合ってくれないか?」
「巴さん」
「無理はしなくて、いいんだ。やはり、元・極道ということが気になるのなら……」
「僕、お付き合いしたいです。巴さんと!」
今、この世で一番好きな人は、巴さんなんです、と蓮は告白した。
「僕なんかで良かったら。僕、僕……」
「また、『僕なんか』と言う。私の好きな蓮は、『なんか』じゃないんだよ」
私も、世界で一番君のことが好きだ。
車内は、甘いバラの香りでいっぱいだった。
二人の気持ちも、バラ色だった。
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