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第六章・6

 巴は、浮かれていた。  愛する蓮と、恋人として付き合えるようになったのだ。  電話をし、ラインを交わし、彼を想った。 「何て充実した推し活だろう!」  だから、肝心なことを忘れていた。  蓮の、絡みを交えた撮影のことを。 「篠原くん。彼が、共演する男優さん。ベテランだから、うまくリードしてくれるよ」 「よろしくお願いします……」  五木に紹介された男は、爽やかな優男だった。  好感の持てる雰囲気を、身にまとっている。 「僕は宮崎(みやざき)。よろしくね、篠原くん」  二人握手を交わし、場は動き始めた。  部屋には大きなベッドがでんと置いてあり、ライトも準備された。  収音マイクに、数台のカメラ。  蓮は、緊張してきた。 (大丈夫かな、僕)  今日は、スタッフの中に巴の姿がない。 (やっぱり、他の人とエッチする僕の姿なんか、見たくはないよね)  動画を撮っても、大丈夫かな。  巴さんに、嫌われないかな。  蓮の緊張は、どんどん高まって行った。

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