49 / 80
第六章・6
巴は、浮かれていた。
愛する蓮と、恋人として付き合えるようになったのだ。
電話をし、ラインを交わし、彼を想った。
「何て充実した推し活だろう!」
だから、肝心なことを忘れていた。
蓮の、絡みを交えた撮影のことを。
「篠原くん。彼が、共演する男優さん。ベテランだから、うまくリードしてくれるよ」
「よろしくお願いします……」
五木に紹介された男は、爽やかな優男だった。
好感の持てる雰囲気を、身にまとっている。
「僕は宮崎(みやざき)。よろしくね、篠原くん」
二人握手を交わし、場は動き始めた。
部屋には大きなベッドがでんと置いてあり、ライトも準備された。
収音マイクに、数台のカメラ。
蓮は、緊張してきた。
(大丈夫かな、僕)
今日は、スタッフの中に巴の姿がない。
(やっぱり、他の人とエッチする僕の姿なんか、見たくはないよね)
動画を撮っても、大丈夫かな。
巴さんに、嫌われないかな。
蓮の緊張は、どんどん高まって行った。
ともだちにシェアしよう!