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第六章・7
「篠原くん、表情が固いね」
「どうにかならないかな」
スタッフが危惧する中、ベッドに掛けた宮崎が話しかけて来た。
「篠原くん、好きな人とかいるの?」
「え、あ、は、はい。います」
「その人への義理とか、考えなくていいからね。仕事だから、これは」
「はい」
「もし、この仕事で離れていくような人だったら、本当の恋人じゃないよ」
「ありがとうございます」
少しだけ、吹っ切れた蓮だ。
そう、これは仕事。
頑張るしか、ないんだ。
「はい! じゃあ、撮影開始するよ!」
スタッフの見守る中、カメラは回り始めた。
甘い声で、宮崎が囁く。
「愛してるよ」
あ、そう言えば。
(僕、まだ巴さんに『愛してる』って言ってもらったことない。
好きだ、とは言ってもらえたけど……。
ぼんやりとそんなことを考えながら、撮影は進む。
(今度、僕から言ってみよう。愛してます、って)
撮影で宮崎が気軽に喋った言葉が、蓮にはひどく大切に感じられていた。
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