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第六章・8

 これからマンションへ行ってもいいか、との巴の電話に、蓮は戸惑った。  撮影は、無事に終了した。  だが、くたくたなのだ。  自分が思っている以上に、身も心も緊張していた蓮だった。 「僕、何にもお構いできないと思うんですけど」 「別にいいよ。顔を見たいだけだから」  今から向かう、と通話を切って、巴は車を走らせた。 「私としたことが。大切な撮影の日を忘れていたなんて!」  蓮は、大丈夫だっただろうか。  初対面の男優と、絡んだのだ。 「疲れただろうな……」  彼に告白する前は、ただ自分の気持ちが先に出ていた。  推しが、別の男と寝る。  そんな事実に、耐えられるかと。  だが、蓮が自分より大切になった今は、彼のことを思わずにはいられない。  怖くなかっただろうか。  この仕事が、もう嫌になったりしなかっただろうか。  ただ、蓮をいたわりたい。  それだけを胸に、マンションに向かった。

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