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第八章・3

「う、わぁ……」  蓮の目の前には、朝日にきらきらと輝く波が。  耳に爽やかな、潮騒が。  巴は、彼を海辺の別荘へ招待していたのだ。 「お誕生日おめでとう、蓮」 「ありがとう、巴さん!」  二人は車から降り、浜辺を歩いた。 「僕、自分の誕生日をすっかり忘れていました」 「そんな迂闊な。私の宝物が生まれた、聖なる日だぞ」 「大げさですよ」  笑い合いながら、ゆっくりと散策する時間は、蓮の心身を潤していった。  思えば、巴と初めて出会ったのも、海だ。  運命的なものを、感じていた。 「お腹はすかないか?」 「少し」 「朝食の準備は、すぐにできるよ」  コテージに戻り、巴は蓮のために腕を振るった。  クロワッサンに、フルーツサラダに、ベーコンエッグに、はちみつヨーグルトに、カフェオレに、チーズケーキに……。 「こんなにたくさん!」 「全部、食べてくれよ」  賑やかな食卓で楽しい朝食を摂っていると、巴のスマホが鳴った。

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