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第八章・5

 五木との通話を終えた巴は、蓮に隠さず事実を伝えることにした。 「共演してる尾崎さんが、役を降りると言い出したそうだ」 「ええっ!?」  なぜだろう。  蓮は、混乱した。  優しい、おじいさんみたいな尾崎さん。  一緒にお弁当を食べたり、昔の話を聞かせてもらったり……。 「彼は、体力に自信が持てなくなったからだ、と言っているそうだ」 「で、でも。尾崎さんは、太極拳をされてて。師範の資格ももってらっしゃる、って」  そうなんだ、と巴は指を組んだ。 「体力は、充分あるはずの尾崎さんだ。何か、別の理由があるに違いない」 「僕、どうしましょうか」 「蓮は、気にしなくてもいいよ。今まで通り、蓮は蓮のままでいればいい」  私が、彼と会って話してみる。  そう、巴は言った。 「元・極道の私が、表には出たくなかったんだが。緊急事態だ」 「巴さん……」 「心配しないで。私に、任せて欲しい」  巴は、蓮の頭を抱き寄せて髪を撫でた。

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