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第八章・8

 あなたは、国英によく似ておられる、と尾崎は微笑んだ。  その眼差しに、かすかに光が宿る。  巴は、そこを突いた。 「祖父の名に免じて、役を貫き通してはくださいませんか?」 「いや、国英はもうこの世にはいない。私より、ずいぶん早く死んじまうなんて、友達がいのない奴ですよ」 「実は、祖父の遺言に奇妙なものがありました」 「遺言に?」 「棺には、一枚の写真を入れて欲しい、と」  それは、若き日の尾崎と国英が、仲良く肩を並べて写っている写真だった。 「まさか、尾崎さんとそこまで懇意にさせていただいていたとは、知りませんでした」  有名人とたまたま出会って、一緒に撮らせてもらったものだ、と幼かった巴は考えていたのだ。 「国英が、私の写真を……」 「祖父は、あなたを推していた。心から」  そして私は、篠原 蓮を推しています。  巴は、深々と頭を下げた。

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