68 / 80
第八章・8
あなたは、国英によく似ておられる、と尾崎は微笑んだ。
その眼差しに、かすかに光が宿る。
巴は、そこを突いた。
「祖父の名に免じて、役を貫き通してはくださいませんか?」
「いや、国英はもうこの世にはいない。私より、ずいぶん早く死んじまうなんて、友達がいのない奴ですよ」
「実は、祖父の遺言に奇妙なものがありました」
「遺言に?」
「棺には、一枚の写真を入れて欲しい、と」
それは、若き日の尾崎と国英が、仲良く肩を並べて写っている写真だった。
「まさか、尾崎さんとそこまで懇意にさせていただいていたとは、知りませんでした」
有名人とたまたま出会って、一緒に撮らせてもらったものだ、と幼かった巴は考えていたのだ。
「国英が、私の写真を……」
「祖父は、あなたを推していた。心から」
そして私は、篠原 蓮を推しています。
巴は、深々と頭を下げた。
ともだちにシェアしよう!