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第九章 永遠の推し
巴の強い要望と、在りし日の国英の存在は、尾崎の心を動かした。
『もう一度、新人のつもりで頑張ってみましょう』
吹っ切れた尾崎の演技は、蓮を成長させる糧ともなった。
ダブル主演は成功を奏し、撮影は順調に進んだ。
「と、なると。後は……」
巴は、社長室のデスクで頬杖をついていた。
フレームに収まった、二人の写真。
蓮と共に、五木に撮ってもらったものだ。
「可愛い私の推し、か」
その蓮は、まもなく羽ばたく。
全国の人間が、蓮を推すようになるだろう。
「一番最初に蓮を推したのは、私なんだぞ」
ぱたん、とフレームを倒し、巴は写真を伏せた。
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