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第九章・5

 舞台挨拶と共に映画は封切られ、蓮は大勢の人間の目に触れることとなった。  もちろん、初めは有名俳優の尾崎を観に、映画館へ足を運ぶ者もいた。  しかし、蓮の初々しい輝きは、多くの観衆を魅了した。  映画評論家の声も、好意的だ。 『尾崎と篠原の共演は、心地よいハーモニーを奏でているようだ』  辛口で有名なライターも、このように好感をもって綴ってくれた。  この国の美しい自然や、四季。  それらをバックに、五木は細やかな人の心の動きを描いていた。  その中で動く蓮は、たちまちのうちに多数の人間の推しになった。 「篠原 蓮、いいよね」 「映画、2回観ちゃったよ」 「ドラマとか、出ないのかなぁ」  彼の今後を、楽しみに待つ人間も多くいた。

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