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第九章・6

 一躍有名人になった蓮だが、それで得意になることは無かった。 「映画は、尾崎さんのおかげで頑張れましたから」  そんな風に、インタビューでは常に謙虚だった。  忙しい、日々。  そんな中、ふと隙間時間ができると、蓮は巴を想った。 「今度、いつ会えるかなぁ」  早く会いたい。  せめて、声を聞きたい。  そう考えていると、その巴から着信があった。 「巴さんだ!」  蓮は、夢中で電話に出た。 『もしもし、蓮か?』 「巴さん!」 『今、いいかな』 「はい。ちょうど声が聞きたい、って思ってたんです」  喜びの頂点にいる蓮は、巴の次の言葉が信じられなかった。 『蓮、さようならだ』 「え?」 『私とは、もう会わないほうがいい』  なぜ?  どうして!?

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