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第17話 ベッドの上で

 寝室にあるベッドの上。  俺は裸にされ、服を着たままの千早に組み敷かれていた。  口付けられるたびに俺の身体の奥底が熱くなり、それは徐々に広がっていった。  キス、気持ち良すぎる。  舌が口の中を動き回り、手が俺の胸を撫でていく。  指先で乳首を抓られれば、甘い痺れを感じる。   「乳首、ぷっくりと膨らんできたな」  くにくにと乳首をいじられながらそう言われ、俺は恥ずかしさに首を振った。 「昨日、ここ、いじった?」   「ンなこと、してねえよ……!」  少なくとも、昨日は乳首なんて弄ってない。  昨日は。 「へえ。じゃあ、前は?」  乳首から手が離れ、俺のペニスに触れた。  すでにソレは完全に勃ちあがり、先走りを溢れさせている。   「そ、それは……」  昨日、触ってはいないけれどでも、触らずにイったと思われるのは嫌だ。  だからと言って嘘もつけず、俺はそのまま押し黙ってしまった。  俺の反応を見て、千早は確信を得たようだった。   「ははは。やっぱりなあ、後ろだけでイったんだ」  満足そうに笑い、千早は俺のペニスを扱いていく。   「う、あ、あ、あ」  怒張したペニスは一気に熱を放出させようとするが、その手は不意に止められてしまう。   「え、な、何で……」 「前だけでイったら、もったいないだろ? 琳太郎。俺はまだ、満足していない」  千早はペニスから離した手を、そのまま後孔へと下ろしていく。  そして、指ですっと、そこをなぞった。 「ひっ……」 「お前に渡したディルド、すんなり入ったんだろ? どれだけ拡がったのか、楽しみだな」  そして千早は、一度俺から離れると、ローションの入ったボトルを手に取った。  ローションを絡めた指が、ゆっくりと中に入ってくる。  俺の後孔はすんなりと指を飲み込み、引き抜かれれば声が漏れてしまう。 「あ……」 「かなり柔らかいな、中。すんなり入りそうだ」  あぁ、挿れてもらえる。  そう思うと中がひくつくのがわかる。  今日はどんな玩具だろうか?  いや、玩具じゃなくてもしかしたら……  あぁ、早く欲しい。腹の奥が、きゅう、と切なく疼いている。  金曜日に初めて抱かれて、まだ四日しかたっていないってのに。  俺は千早が欲しくてたまらなくなっている。   「俺、早く、中、欲しい……」  鼻にかかる声でそう訴えると、千早はにやり、と笑い、俺の足を抱え上げた。 「挿れてやるよ、琳。俺の形を覚えるんだ」  その言葉を聞き、俺はまつ毛を震わせて小さく頷いた。  千早はジーパンを脱ぐと、俺の後孔に先端を押し当てた。  ローションに濡れた後孔は、すんなりと千早のペニスを飲み込み、奥へと入り込んでくる。 「あぁ……」  挿れられただけで、軽く先端から精液が溢れだす。   「ずいぶん感度がいいな、琳太郎。まだ、中に挿れただけなのに、締め付けてくる」  嬉しそうな声音で言い、千早は腰を深く進めた。 「昨日、声聞きながら、ヤりたくて仕方なかった。琳太郎、俺は毎日抱いたって足りないんだよ」 「ひっ……あぁ!」  この間よりも深く入り込み、俺は背を反らし声を上げた。 「もう少しで、全部入りそうだな、琳太郎。やっぱりお前、素質あるよ」 「千早……中、きつい……」 「きつい? イイ、の間違いだろう」  言いながら千早は俺の足を抱え上げたまま、ベッドに手をつき、激しく腰を動かし始めた。  そのたびに、俺の視界も頭も白く染まり声が漏れ出る。 「あ、あ、あ……千早、なか……」 「お前の中、熱くて気持ちいいっ……やばいな、これ」  千早は余裕のない声で呟き、腰をひき、一気に奥へと腰を進めてくる。  快楽の波が一気にひろがり、俺はあっという間に達してしまった。   「お前を選んで正解だったよ、琳太郎。お前は、俺の番だ」  その囁きに、どこか闇を感じるのはきっと気のせいではないだろう。  俺はベータだ。俺を番にする、なんていうのは間違っている。そう思うのに、彼を求める俺がいるのも確かだった。  その後、体勢を変えてもう一度抱かれ、俺はぐったりとベッドに転がった。  俺はうつ伏せになり、枕を抱えこむ。  この間よりだいぶましだが、これで明日大学行ってバイト行くとか無理すぎるだろう。  俺の隣で座る千早は、俺の背中を撫でて言った。 「琳太郎、本当に家を出るならここに住めよ。というか、他に住むのは許さない」  あぁ、まただ。  千早の声に含まれる威圧が、俺の心を縛り付けようとする。 「お、俺はまだ……家出るって決めてねえよ」 「なんだ。それは残念」  言いながら、千早は俺の髪をそっと撫でた。 「うちに住めば、いちいち周りのことなんて気にせずヤれるのに」 「それはお前が家でもやれって言ったからだろ?」 「お前を傷つけるつもりはないからな」  なんだろう、それ、すごくもやもやする。  そもそもこいつが俺を番にするとか言い出さなければ、そんなことしなくてもいいはずじゃあ? 「じゃあなんでお前、俺にこんなことするんだよ」  枕をぎゅう、と抱きしめて尋ねると、千早は俺のうなじに顔を埋めてきた。 「俺がお前を選んだんだ。それ以上、理由なんてない」 「ン……俺じゃなくても、いいだろう」 「お前がいいんだよ、俺は。そもそも、アルファって言うのは執着心が強いらしい。今まで人にこんなこと想った事ないから、俺にもよくわからないけど」 「あン……わかんないって、どういう……」 「いいだろう。俺はお前を選んだ。そしてお前は拒絶しなかった。約束の日までお前は俺の番でいればいい、それだけだ」  そう言って、千早は俺のうなじを、がぶり、と噛んだ。   「あっ……」  鈍い痛みのなかに甘い痺れを感じ、そのことに俺は戸惑った。  痛みを快楽と思うようになるとか、俺、どうかしてるだろ。  うなじなんか噛まれても嬉しくないのに。  千早はうなじから口を離すと、噛み痕をぺろりと舐め、俺の横にごろん、と寝転がった。  そして、俺の身体を抱きしめて囁く。 「お前は俺の番だ。だから俺のそばにいろ」  そう言われると、心が揺らぐ。  おかしい。俺にとって、千早は友達であるはずなのに。  なんなんだこの感情は。  俺は訳が分からず、千早に背を向けて両手で顔を覆った。

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