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第48話 いつもと違う★

 六月二十一日火曜日。  今日は、千早と会う日。  あいつの部屋に行き、することは基本ひとつだ。  夕食を終え、風呂に入ればその時間が始まる。  当たり前のように。  週末、よほど我慢したらしい千早はずいぶんと性急だった。  腹の中を綺麗にされた後とはいえ、風呂場でそれをされるのは未だに抵抗がある。  湯船を掴み、シャワーを背中に当てられながら俺は、千早の与える快楽に耐えようとした。  彼の指が後孔に入り、前立腺を押しつぶす。   「ひっ……」  そこを撫でられるたび俺は喘ぎ、腰を揺らした。   「久しぶりだから、狭いな」  どこが狭いんだ。千早の指を二本も難なく飲み込んでるってのに。  そう思いつつ、俺は湯船を掴む手に力を込める。 「でも、中は柔らかい」 「う、あぁ……」  指は激しく抜き差しを繰り返し、もう一つの手が俺のペニスを扱いていく。  後ろと前と。  同時に刺激されたらひとたまりもない。   「そ、そんなにする、なよ……イく、から……」 「イけよ、琳。俺の手の中で出せよ」 「や、だ……あ、あ、あっ!」  指でイくのは嫌なのに、あっけなく俺は達してしまう。  足がガクガクと震え、その場に崩れ落ちそうになる。その身体を後ろから抱きしめられ、うなじに口づけられた。 「あ……」  そこにあるのは、消えることのない噛み痕。  俺が実際に目にすることのできないその傷は、常にそこにあり続けている。  千早の所有物である、という証。   「琳太郎」 「ち、はや……」  イったばかりの身体は熱を帯び、奥底が物欲しげに疼いている。  千早によって変えられた身体は、射精だけでは満足できなくなってしまっている。  中に欲しい。前立腺を押しつぶし、奥を突きまくってほしい。  俺は後ろを振り返り、千早に訴えかけた。 「中、せつねえ、よ……早く、欲しい」  息を切らせて言うと、千早が息を飲むのがわかる。 「大丈夫なのか?」  風呂場で始めるくらい余裕がない癖に、何を気にしてるんだこいつは。  俺はまだ満足なんてしていないし、千早だってしたくてたまらないだろうに。 「だ、大丈夫、だから……」  息を切らせて言うと、千早は俺の身体を反転させ、唇を重ねる。  舌が唇を舐め口の中で蠢き、舌を吸い上げ唾液を混ぜていく。  あぁ、息が苦しい。  頭がぼうっとして、後孔が物欲しげにひくついているのがわかる。  口が離れたとき、俺は吐息を漏らし千早にしがみ付いた。   「ベッドで」  千早はそう告げ、シャワーを止めた。  仰向けに寝転がる俺の足を抱え上げ、千早が覆いかぶさってくる。  先ほどまでローションで解されていた後孔はぱっくりと口を開け、千早の侵入を待ちわびている。 「挿れるぞ」  気遣うように千早は言い、後孔に先端を宛がう。  こんなにゆっくりと事を進めてくるのは珍しい。  俺は手を伸ばし、千早の首に手を回す。 「早く……」  そう切なく呟くと、千早はゆっくりと腰を進めた。  俺の後孔はやすやすと亀頭を飲み込み、前立腺を掠め奥へと入ってくる。  まだ奥までたどり着いていないのに、千早は動きを止めてしまう。 「辛く、ない?」  不安げな声で言い、千早は俺の顔を見つめる。  いつもと違う様子に正直戸惑うが、俺は頷き、 「大丈夫、だから」  と言い、腰を浮かせた。  千早によって散々拡げられた俺の後孔は、千早のペニスを奥までやすやすと飲み込んでいく。  奥の奥をこじ開けられる感覚に、俺は吐息を漏らした。  快楽が脳まで一気に駆け抜け、視界がチカチカと点滅する。 「あぁ……」 「動くぞ」  千早は半分まで引き抜きそして、ゆっくりと奥まで腰を埋める。  いつもはもっと激しい癖に、今日はずいぶんと優しい。  先端が奥を突くたびに俺は背を反らし、身体を震わせて声を上げた。  奥、良すぎる。  俺の思考は徐々に快楽に溶け、イくことばかり考え始める。 「中、気持ちいい」  千早が切なげに呟きそして、少しずつ腰の動きを早めていく。   「い、い……千早、奥、クるク……」  奥を突かれまくり、俺は堪らず果てた。  ペニスから溢れた精液は俺と、千早の腹を濡らす。  それでも千早は動きを止めず、余裕のない声で呻いた。 「ごめん、琳太郎……奥、出す」 「え? あ……」  出す、の意味を理解する間もなく、千早は動きを止める。  どくどく、と、俺の中で千早のペニスが膨らみ奥で溢れていくのがわかる。  あぁ、奥で出すってそう言う意味か。  いつもなら、正直嬉しくはないことなのに、今日は拒否感よりも幸福感の方が強い。 「ち、はや……」 「琳太郎、もっとしたい。お前が、大丈夫なら」  珍しく控えめに千早は言い、俺は小さく、大丈夫、と呟いた。  そのまま、抜くことなく二回目を始め、中に出された精液が、抜き差しされるたびに隙間から溢れでて、尻から流れていく。  時間の許す限り俺たちは求めあいそして、帰る頃に俺は、ぐったりと動けなくなっていた。

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