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36.何を考えているのか分からない<アリィ→リューSide>

「そんなに見つめられると照れるな。顔には自信があるからね。リューも惚れてくれても構わないよ?」 「……お前こそ、いつもそんな軽口ばかりで。一体何を考えている?馬鹿のように見せて、お前は馬鹿ではないだろう?」 「それはどうかな?僕は楽しめればいいから、それ以外は何も考えていない」 「確かに、お前は切望する何かを感じられない。人は何かしら訴えるものがあるはずだが、そういったものを感じない」 リューが僕との会話にのってくれるのは嬉しいが、どうして答えづらい方向に行くのやら。 僕だってまぁ、色々とある訳で。リューに比べたら大したことはないけれど。 「……お前が何であろうと関係はないが。バディである以上は、バディとしてやるべきことはするだけだ」 「じゃあ、逆に聞くけど。リューがこうして僕に付き合ってくれるのはバディだから、本当にただそれだけ?」 僕が真っ直ぐに見返すと、リューはさも当然のように、あぁ、と答えた。 (それはそうか。期待しても仕方がないのに何を聞いているんだか) 僕は何事もなかったように微笑んで、葡萄酒をなみなみと注いでグラスを持つ。 しばらくグラスを回してから、喉にグッと流し込んだ。 「リュー、付き合ってくれてありがとう。後は1人で飲むから眠るなら先に眠って」 「……分かった」 リューはスッと立ち上がり、僕の方を振り返ることもなくベッドルームの方へと行ってしまった。 (相変わらず、あっさりしてるよな) その後ろ姿を視線で追いながら、また葡萄酒を注いだ。 ……今夜は1人で深酒になりそうだな。 +++ リューライトは一度ベッドに寝転んだが、一向にアルヴァーノが来ない。ベッドは同じベッドで眠るべきだと頑固に譲らなかったアルヴァーノの意見に押し負けて、仕方なくアルヴァーノが特注した大きなサイズのベッドに2人で寝ているのだが。別の部屋に1人用のベッドもある。 お互いに自室があり、どちらかが家を開けている場合はそちらで眠っていた。 (別にここで眠らなくてもいいのだが、習慣というものは恐ろしいものだな) 1人で眠るには広いベッドだ。今日は大して疲労もしていないし、先程少し眠ってしまったこともありリューライト自身の眠気も早々と訪れそうにもない。 (それでも時間は一刻は経ったはずだが。まだ酒を飲んでいるのか?) アルヴァーノに関してはそれならそれで関係ない。 やはり眠れないので身体を起こしてもう一度軽く鍛錬でもしてこようかと、屋上へ向かう階段へと向かう。屋上へ行くには先程のソファーの部屋を通ることになるのだが、足音も立てずに歩いていくとソファーのところで突っ伏しているアルヴァーノがいた。 (酒は強いはずだし、酔っても飲まれたりしないヤツだと思っていたが。珍しいな) 次の日にどうして起こさなかったなどと騒がれても面倒だと思いソファーの側に酔って様子を見に行くと、グラスを握りしめたまま顔面をテーブルに突っ伏している。 (僕の綺麗な顔がどうのとか、気にしている癖に。何故この形で?) アルヴァーノは自身の魅力を全て理解した上で普段から気をつけて生活している。 それが染み付いてしまっていることは、そういうことに疎いリューライトでも気付くくらいだった。髪の毛も梳して乾かし、肌の手入れもし、自身の利点を活かすためならば時間を厭わずに女性よりも気をつけているはずだ。 (様子が少しおかしいような気はしていたが、何か悩みでもあるのか?) リューライトには分からなかった。人の感情の機微など考えたこともないからだ。 気配や雰囲気で察することはできるが、アルヴァーノは飄々としていて感情を出しているようであまり出さないのでリューライトでは捉えきれない。 身体を重ねているときは快楽に素直なので、何をすれば喜ぶだとかこういうことが好きなのだろうと、少しずつ理解はしてきたつもりだが。別に喜ばせようと思って動くこともない。たまたま気が向いてからかえばそれが当てはまったとか、その程度のことだ。

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