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45.白い世界の中で<アリィ→リューSide>

   暫く耐えると何とか収まった気配はするが、とても息苦しい。  リューがゆっくりと目を開いて、そのまま、と言うので、大人しくゆっくりと深呼吸だけする。  何とか呼吸する空間は確保できているのが幸いだった。  リューがゆっくりと雪を掻き分けていく。 「リュー……」 「いいから、動くな。ゆっくりと溶かして退かす」  リューがはめているグローブにも熱が出る魔石が付いているので、慎重に雪を溶かしていく。  溶かしている間、僕は冷たい空気を吸いすぎないように静かにする。  その作業を続けていると、何とか外へと繋がる穴が広がってきた。  それを見て安心したら、なんだか眠くなってくる。  寝てはいけない気はするが、どうしても睡魔に勝てない。 「よし、これで少しずつ……」 (リュー……ごめん。ダメかも……)  僕はリューの手を握りしめたまま、だんだんと視界が白で埋め尽くされていく気がした。 +++  作業に集中していて、アルヴァーノの変化に気づけなかった。  気づくと繋がれていた手が解けていく。 「アルヴァーノ? 寝るな、起きろ!」  慌てて頬を叩くがその頬も大分冷えてきている。  自分の手も感覚はとっくになくなっているが、急ぎ脱出しなければならない。  無心で外へ続く穴を広げると、雪崩が止まっていることを確認して足を何とか踏ん張り身体を少しずつ外へと出していく。  何とか表面から顔を出して、辺りの様子を確認する。  雪崩で魔物も人も流されたのか、静かな銀世界だけが広がっていた。  まずは自分の身体を引きずり出してから、無理矢理手に力を込めてアルヴァーノも何とか引っ張り上げていく。 「――ック」  寒冷地仕様の装備でなければ凍傷になって、身体が使い物にならなくなっていただろう。  それでも冷たいものは冷たく、力を容赦なく奪っていく。  こんなところで死ぬわけにはいかない。  俺はいつ死んでも構わないと思っていたが、アルヴァーノを死なせてはいけないと心の奥がジリジリと焦げるような感覚に襲われて、身体が勝手に突き動かされる。  焦燥感? それとも?  今はゆっくりと考えている暇はない。  他のヤツらが全滅したとしても、それは自らの行いの愚かさの結果だ。  漸く身体を引っ張り上げたアルヴァーノの身体はかなり冷え切っていた。  意識も戻らない。  自分の身体も暖かくないが、アルヴァーノを背負って歩を進める。  記憶が確かならば、この先に小屋があったはず。  一歩、また一歩。  不安定な雪の上を探りながら、必死に歩き続ける。 +++ 「……はぁっ、はぁっ……」  目が霞んできた。  息もしているのか、していないのか分からない。  それでも足だけは止めずに進んでいると、漸く茶色が目に飛び込んできた。  ――避難小屋だ。  ふらつく足で木の階段をのぼり、片手を伸ばしてなんとか木の支えを外す。  カラン、と乾いた音がした。  扉を慎重に開ける。  中は本当に大したものは何もなかったが、暖炉があるのが見えた。  後ろ手で扉を閉めて室内へと進み、暖炉の前にアルヴァーノを寝かす。

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