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54.意外な出迎え
※42話からのあらすじ
ギルド長自らが募集をかけていた討伐依頼で、寒冷地へ出向いたリューライトとアルヴァーノ。
多人数パーティーで向かった先の雪山には大量のイエティがいた。
地道にイエティを倒していく二人に対して手柄を先走る者が魔石で爆発を引き起こし、全員雪崩に巻き込まれてしまう。
生存者も分からぬまま何とか危機を脱したリューライトは、アルヴァーノを背負って命からがら避難小屋へ辿り着いた。
目が覚めた二人は改めて互いに生きていることを喜び、また少しずつ心の距離を縮めていく。
天候が回復するまで小屋で一晩過ごし、最低限の体力を回復させて漸く帰還への第一歩を踏み出した。
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リューの先導で何とか魔導車を置いた場所まで戻ってくると、予想通りその後の調査にやってきたらしいギルドの面子と出くわした。
「もしかして、生存者か? そういえばお前たちも戻っていないと聞いていた」
「リューライト・ディケンズとアルヴァーノ・ロイル。二名とも目立った異常はありません」
リューが僕より先に状況を報告すると、調査員がここで待てと言って誰かを呼びに行ったみたいだ。
僕たちは魔導車に座らされ、毛布にくるまりながら渡された暖かいスープを飲みながら待っていると、誰よりも目立つ赤髪と体躯の人物が近寄ってきた。
「やっぱりお前らは無事だったか! 依頼も何とか達成したみたいだな。どうせ馬鹿どもがやらかしたんだろ。少々嫌な予感はしたんだが……」
「ギルド長? わざわざこんなところまで来たんですか」
ギルド長のバルドギス……この人は大抵勝手にやらせて後で尻ぬぐいまでしてくれる人だけれど、今回はやたらと動きが早かった気がするな。
もしかして、リューのことが心配だったとか?
「おう、アルヴァーノ。生きてたか。まあ、リューライトがいれば大丈夫か」
「そうですね。リューがいなければ今ここにいませんよ」
僕が素直に言い切ると、僕とリューの頭をガシガシと乱暴に撫でてくる。
子どもじゃあるまいし……と思ったけれど、リューのことは拾ってきたって言ってたしある意味子どもみたいに思っているんだろうな。
リューは暫く黙っていたが、ふと顔を上げてギルド長を見遣る。
「ギルド長、俺たちはいつまでここにいればいいでしょうか? 体力面は大分消耗しているので、できれば帰還したいのですが」
「お前が言うのは珍しいな。確かにこの雪崩の後を見りゃそうだろうな。お前らも巻き込まれたのか」
「頭の悪いヤツが手柄を焦ったおかげで、この有様ですよ。後はお任せして、僕もできれば暫く休ませて欲しいですね」
「お前はいつも休んでいるだろうが、アルヴァーノ。まあ、今回は規模がデカいヤマだったから報酬も期待していいぞ。もらえなくなった奴らもいるから余るだろうしな」
ギルド『メルセネール』は、自分の命は自己責任の契約だからな。
死んだらおしまいだ。
(はあ……本当にリューとバディで良かった)
心の中で呟いたはずなのに、隣に座っているリューと目が合う。
リューの目元が少し和らいで、帰ろうと呟いたのが分かった。
ギルド長は僕たちのやり取りを見ていたのか、魔導車を動かすように指示を飛ばす。
「俺らはまだやることがあるからな。報酬は全て終わったあとに分配する。お前たちは隠れ家でゆっくり休め」
「お気遣いありがとうございます。今回は甘えさせていただきます」
「右に同じです。報酬、弾んでくださいよ?」
僕たちの言葉を聞いて、ギルド長は豪快に笑い飛ばすとじゃあなと言って見送ってくれた。
今回の依頼もキツかったな……いつもキツイ依頼を受けているのが気のせいだと思いたい。
暫くリューとゆっくりと過ごせるのが唯一の救いだけれど、まずはゆっくり暖かいベッドで眠りたい気分だ。
(でも……この機会に更に距離を縮めて、もっと深くリューと繋がらないとな)
僕の企みは顔に出てしまっていたのか、リューの小さいため息が聞こえてきて笑ってしまった。
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