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55.安心できる二人の居場所

   何はともあれ、漸く愛しの隠れ家まで戻ってくることができた。  装備を床へ下ろすと、本当に家へ帰って来られたことを実感できる。 「リュー、お疲れさま」 「……ああ」  リューは短く答えながら装備を一つずつ外しているけれど、様子がおかしい気がする。  動きが緩慢というか、リューに興味を持った頃にもこんなことがあったような……。 「リュー?」 「……」  装備を全て外し終えたところで、リューがふらりと体勢を崩す。  慌てて支えると、リューの体温がかなり高いことに気づく。 「リュー、ギルド長に帰らせて欲しいって伝えていたのは……」 「すまない、どうやら今になって体調を崩したみたいだ。アリィ、悪いが少し手を貸してくれ」 「それは構わないけど……待って、かなり熱が高いんじゃない?」  額に手を当てると、予想通り高熱を出しているみたいだ。  リューには色々と無理をさせてしまったから、安心したせいなのか反動が来てしまったらしい。  肩を貸して何とかベッドまで連れていき、リューの身体を一旦横たえる。 「待ってて。着替えとか色々準備してくるから」  リューは小さく頷いて、両目を瞑ってしまった。  いつから体調が悪化したのか分からないけれど、ギルド長と話している時から異変に気付いていたのだろう。  (もっと僕に頼ってくれていいのに……それにリューは元々身体が丈夫じゃないのかもしれないな。すぐ無理をするし)  僕は身の回りのものや常備薬を準備して、ベッドルームへ順番に運ぶ。  リューの様子を見たけれど、具合は更に悪化してきているみたいだ。  まずは一旦身体を起こして、解熱効果のある薬を飲ませる。   「僕のワガママを聞いてくれたから余計だよね。ごめん」 「いや……俺が軟弱なだけだ。また迷惑をかけてしまったな」  リューが俯きながら、自嘲気味な口調で呟く。  僕はリューを再びベッドへゆっくりと寝かせてから額に水で絞ったタオルを乗せ、優しく髪を撫でる。   「軟弱な人は僕をおぶって小屋まで連れていけたりしないよ。全部リューのおかげだって言っただろう?」 「……そうか」  そう呟いてから、リューはまた目を瞑ってしまった。  本当は何か食べた方がいいのかもしれないけれど、スープを飲んでいたし薬が効くまでは眠ったほうがいいだろう。 「大丈夫。僕はリューのおかげで元気だから、リューのお世話は任せて」 「ああ。頼んだ」  リューが頼むと言ったからには、僕は休暇の間つきっきりで看病しないと気が済まない。  安心させるように何度か撫でてあげると、リューは眠りに入れたみたいで静かに浅い呼吸を繰り返し始めた。  僕の手に触れる吐息も、かなり熱い。    (リュー……もう大丈夫だ。安心して休んでくれ)  額に当てたタオルをまた冷やし直して、暫くリューの様子を見守る。  時々うなされるように眉を顰めるから、その度に手を握ってリューの耳元で大丈夫だと呟いた。

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