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第4話 出会い Ⅲ

コンコンッ ノックする音にスマホでゲームをしていた真生は顔を上げた。 「真生くん、おまたせ。」 「おー、坂ちゃん。お疲れ様!」 坂口はいつものように笑っているが少し疲れているようだった。 「機材届いたって。あれ、樹くんは?」 「樹なら散歩に行ったよ。呼んだほうがいい?」 「うん、お願い。」 「おっけー。」 スマホを操作しᏞ○NEを開く。樹はピン止めしているので一番上にいる。 通話ボタンを押して数秒後、室内で着信音が鳴り響いた。 「あれ?」 音のする場所を探すと樹の撮影衣装に辿り着いた。ポケットからスマホを取り出す。 「あー!樹スマホ忘れてんじゃん!」 「樹くんって意外と抜けてるよね。」 坂口はくすくすと笑っている。 「もー。」 これでは樹が帰ってくるのを待つしかない。 すぐに帰ってくるとは思うが。 「……。」 何となく不安を感じた真生はぎゅっと樹のスマホを握りしめた。 ⸺…迷った。 樹はゼェハァと息を吐きながら膝に手をついた。 蛇に驚き随分遠くへと走ってきてしまった。 「なんか道じゃない所に来ちゃったし、方角が全くわかんない。」 取り敢えずスマホ、とポケットを探ったが見当たらない。 「あれ?」 ポケットはパンツにしかついてないはずだがどちらにも入っていない。 おかしいなぁと思いながら記憶を辿っていく。 「…あー!!」 ⸺撮影衣装の方に入ったままだ! やばい。連絡手段がない。 こういう時は無闇に動かない方がいいと聞くが、今は非常事態だ。動かなければ帰れない。 多分来た道であると思われる方へ歩き出した。 ガシャンッ! 一瞬何が起こったのかわからなかった。 大きな音がなったと思った次の瞬間、右足に強烈な締め付けと痛みを感じた。 見ると足にワイヤーが掛かっていた。 ワイヤーのもう片方は近くの木に|括《くく》り付けられている。 何だこれ、意味がわからない。 これでは動けないではないか。 一気に不安が押し寄せ、樹は力づくで外そうと何度ももがいた。 しかしワイヤーは頑丈でビクともしない。 どさっ 「痛っ!」 もがいている最中にバランスを崩し樹は倒れ込んだ。 「何なんだよもう!」 段々苛立ちと焦りが募っていく。今の自分の惨めさたるや、他に類を見ないだろう。 連絡手段がない上に動けないのではもうどうしようもないじゃないか。 泣きそうになるのを必死に抑える。 森の中は驚くほど静かだ。その分普段より聴覚が過敏になり、木の葉が落ちる音にすら反応してしまう。 そのことがより一層樹を不安にさせた。 ついさっきまでは心地よかった森林の壮大さが、今では恐怖になっていた。 周りを見渡しても木、木、木。どこまでも続いていくそれは樹をちっぽけな存在にする。 ⸺…俺は、このまま見つけられず死ぬんだろうか。 途方に暮れ空を見上げた。 木々の間から澄んだ青空が見える。 ガサガサッ 突然、近くの茂みが揺れた。 「わっ!」 ビクッと身体を震わせ、その茂みを見つめた。揺れは止まっている。 何かがいるのだろうか。恐怖で目が離せない。 しばらくして茂みがもう一度大きく揺れた。草木の間に隙間ができる。 そこからギラリと光る目が樹をとらえた。 ひゅっと喉がなる。 大きな塊が樹めがけて飛び出した。 「わー!!!」 死ぬという恐怖に涙が止まらない。 ぎゅっと目を閉じると、塊が樹の上に覆い被さった。 「わんっ!」 「…わん?」 目を開けると、2匹の大きな犬が樹を見つめていた。 涙を拭うように顔を舐め回す。 「……犬かー。」 今度は安堵の涙が溢れだす。よかった、死ななかった。 感情の振れ幅の大きさにどっと疲れがでた。犬をどかすのも面倒くさい。 しばらくこのままでいよう、そう思った矢先。 「ハル、アキ。」 低く落ち着いた声が静かに響いた。

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